2014 Fiscal Year Annual Research Report
CO2からメタノールを直接合成するカプセルリアクター型人工光合成システムの構築
Project/Area Number |
24310052
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
鈴木 昇 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40134259)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 人工光合成 / 酵素 / カプセル / 亜鉛テトラフェニルポルフィリン |
Outline of Annual Research Achievements |
光触媒と酵素を複合化した電子伝達系を組込んだカプセル型リアクターを構築し,光によって二酸化炭素を原料として価値ある化合物を合成するための人工光合成システムを構築することを最終目標とし,平成26年度は,亜鉛ポルフィリン(ZnTPP)を光触媒で光励起した電子を利用したギ酸脱水素酵素(FDH)によるCO2からギ酸を合成する系の最適化を目標とした。 キセノンランプによる光照射(>400nm)によってZnTPPで光励起した電子をジアホラーゼ(DAH),メチルビオロゲン(MV),ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド酸化型(NAD+)を介してFDHのCO2固定化反応に利用する電子伝達反応を最適化するために,個々の素反応を検討した。MV2+と犠牲剤のトリエタノールアミン(TEOA)を含むHEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)緩衝液と,壁膜にZnTPP光触媒とある種の界面活性剤を固定化したアルギン酸-アミノシラン複合膜を有するカプセル(AEAカプセル)を石英セルに入れ,酸化体MV2+の還元体MV+への反応を検討した結果,MV2+濃度が高いほどMV+生成速度が増大した。また,電極還元したMV+を用い,DAHを含むAEAカプセルを用い,NAD+の還元体であるNADHへの反応を検討した結果,NADHの経時的な生成を確認するとともに,MV+濃度が顕著に影響を与えることを見出した。 今後の課題として,カプセルへの光照射によるMV+の生成速度を高めるために,光強度,光触媒量,MV2+濃度の条件を最適化する必要がある。他方,カプセル膜の拡散抵抗によるMV+の拡散律速が反応に影響を与えた可能性も考えられることから,カプセル膜の拡散抵抗を小さくする検討を新たなカプセルの開発を含めて行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ZnTPP光触媒を固定化したAEAカプセルを用いたMV2+からのMV+生成実験において,可視光のみの光照射下ではMV+が生成しないことが分かり,その原因追求と対策に時間を要した。概要で示したように,ある種の界面活性剤をカプセル合成時に使用することで,MV+およびNADHの生成に至ることができたが,CO2からの直接的なギ酸生成,およびメタノール合成にまでは至らなかった。また,アルギン酸をカプセルの壁材の生成に利用しているが,拡散抵抗を考慮して,新たなカプセルの構築も検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
光触媒と酵素を複合化した電子伝達系を組込んだカプセル型リアクターを構築し,光によってCO2を原料として価値ある化合物を合成するための人工光合成システムを構築することを目標としているが,アルギン酸系のカプセルにおいて,酵素固定化率を高めるための方策として,グルタルアルデヒドによる架橋反応を利用することで酵素固定化率を高めることに成功したが,NAD+からのNADH生成量が少なく,ギ酸の生成にまで至っていない。本研究では最終的にCO2からのメタノール合成を目標としているが,極めて難しい状況にあることを受け止め,光照射下でのギ酸生成を目標として,以下の実験を遂行する。 1)ZnTPP-DAH-FDH系カプセルによる全波長光照射下でのギ酸生成実験:ZnTPP内包カプセルを用いた光照射によるMV2+の還元、ZnTPP-DAH内包カプセルを用いた光照射によるNADH生成を確認し、ギ酸生成系が機能しているか確認し、ZnTPP-DAH-FDH内包カプセルを用いた光照射によるギ酸の生成を検討する。なお,この系については既に着手し,ギ酸生成を確認している。しかし,FDHを除いた系でもギ酸が生成しており,酵素の有無によるギ酸生成量への影響など,再現性も含めて検討を進める。 2)可視光照射下でのMV+を用いたギ酸生成実験:ZnTPP-DAH-FDH系を内包したカプセルを用い,電極還元により多量に生成させたMV+から可視光照射下でのギ酸生成を確認する。さらにギ酸生成量への種々の条件の影響を確認する。 3)CO2からのギ酸生成のためのカプセル型リアクターの調製:上記検討結果により十分なギ酸が生成することが確認できた場合に,CO2からギ酸を直性生成させるためのカプセル型リアクターを調製していく。なお,カプセル壁の強化と浸透性を考慮し,カラギーナン系カプセルの調製とその有効性を検討する。
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Causes of Carryover |
光を利用したカプセルリアクター型人工光合成システムを目指し,酵素固定化に有効なカプセルの調製に成功しているが,可視光下での反応性が極めて低く,ワンカプセル(ワンポット)でのCO2からのメタノール合成を確立できていないため,リーフシステム(平板型反応器)の構築に至っていない。現在,ギ酸生成系の電子伝達システムの確認とメタノール合成条件の再検討を行っている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究では,薬品としての酵素が最も重要な消耗品であり,かつ高額であるため,残額の殆どを薬品(酵素)に利用したい。なお,その他の薬品類や消耗品については校費などを利用する予定である。
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Research Products
(2 results)