2013 Fiscal Year Annual Research Report
分散凝集技術を利用した無毒性画像医療診断ナノカプセルの精密合成法の開発
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24310085
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
小林 芳男 茨城大学, 工学部, 教授 (40250849)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / カプセル / 画像医療診断 / 分散凝集 / 液相法 |
Research Abstract |
発光性半導体ナノ粒子は高い蛍光強度や強い耐光性を持つことから、蛍光イメージング用のマーカーとしての利用が期待されている。現在市販されている発光性半導体ナノ粒子の主なものはCdSe, CdTe化合物系を主成分とした量子ドット(QD粒子)であり、実用化の際にはCdの毒性が懸念される。この問題の解決策として、QD粒子をコアとし、生体不活性物質であるシリカをシェルとするコア-シェル型粒子の作製が挙げられる。また、さらなる毒性の軽減および分散性の向上のために粒子の表面修飾が提案される。本研究では、QD/SiO2粒子の作製およびその粒径制御を行った。さらに、粒子の血液内における滞留性の向上を目的として、生体適合剤であるpolyethylene glycol(PEG)の粒子表面への導入を試みた。 QD粒子、H2O、TEOSおよびNaOHの各初期濃度を適切に設定することにより粒径の異なるQD/SiO2粒子を作り分けることに成功した。QD/SiO2粒子の粒径は大粒径のものは59.1 nm、小粒径のものは粒径20.4 nmであった。また、PEG導入後もシリカカプセル化構造は維持された。QD/SiO2-PEG粒子の等電点は約2であり、QD/SiO2粒子の等電点約3と比較して低pH側にシフトした。このことから、QD/SiO2粒子表面の状態が変化したと考えられ、これはPEG導入によるものと推察される。各粒子コロイド溶液のIVIS蛍光画像から、QD粒子濃度が大きくなるにつれて蛍光強度が高くなることが確認された。また、シリカカプセル化およびPEG化後も蛍光は維持された。既に、本グループでは本法を応用してAuナノ粒子表面にPEG鎖を担持し、マウス内の血液滞留性を改善することに成功している。よって本研究で開発した蛍光ナノ粒子による蛍光造影診断への応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種造影粒子のナノカプセル化の際の各種操作条件(試薬濃度、反応温度等)が得られるナノカプセルの形態に与える影響についてある程度理解することができた。この成果は各種ナノカプセルの作製法を確立するのにきわめて有用な知見であるため、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
実用化に向けた特性評価 平成26年度は、おもにこれまでの開発研究により得られたナノカプセルを用いて、医療検査用ナノカプセルの実用化に向けた特性評価を行う。以下に特性評価方法を示す。なお、東北大学大学院医学系研究科の権田幸祐講師および大内憲明教授に連携研究者として本研究に加わっていただき、本評価を協力して行う。 ①発光造影:CdSe系ナノカプセルコロイド溶液を用いる。あらかじめ、遠心により高濃度に濃縮しておく。次に、ラットにジエチルエーテル蒸気を吸入させ、麻酔をかける。足部の体毛を剃り、得られた高濃度ナノカプセルコロイド溶液を皮下注射する。所定の時間経過後、外部からレーザーを照射し、発光造影特性を調べる。それぞれの試験の後、生体組織を分析し、毒性についても調べる。 ②X線造影:AgI系ナノカプセルコロイド溶液を用いる。発光造影試験と同様にラットにナノカプセルコロイド溶液を皮下注射する。所定の時間経過後、X線を照射し、造影特性を調べる。それぞれの試験の後、生体組織を分析し、毒性についても調べる。 ③MRI:Gd系ナノカプセルコロイド溶液を用いる。発光造影試験と同様にラットにナノカプセルコロイド溶液を皮下注射する。所定の時間経過後、MRI装置を用いて造影特性を調べる。それぞれの試験の後、生体組織を分析し、毒性についても調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
開発したナノカプセル粒子の造影試験を行うだけでなく生体内での毒性の調査等が本開発材料の実用化には不可欠である。その調査には大量の試料の作製し、各種特性評価実験を繰り返し行うことが有効である。そのために、H25年度は物品費、旅費、人件費を抑えてH26年度の繰り返し実験の費用にあてることにした。 (1)各種カプセル化粒子の大量合成のために試薬、器具等を購入する。 (2)各種カプセル化粒子コロイド溶液の造影特性の再現性の確認のために試薬、器具等を購入する。
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