2013 Fiscal Year Annual Research Report
外来侵入植物による遺伝的汚染-ギシギシ属在来種の危機的実態の解明
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24310168
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧 雅之 東北大学, 学術資源研究公開センター, 教授 (60263985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 伸二 人間環境大学, 人間環境学部, 准教授 (40228945)
石濱 史子 独立行政法人国立環境研究所, 生物圏環境研究領域, 主任研究員 (80414358)
酒井 聡樹 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (90272004)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 在来種保全 |
Research Abstract |
外来侵入種の在来種や在来生態系への影響は,生物多様性保全の観点から深刻な問題となっている.外来侵入種と在来種の間に十分な生殖的隔離がない場合,両者間で交雑が繰り返し起こることによって,在来種の遺伝子プールが汚染される可能性がある.雑草性のタデ科ギシギシ属では,ヨーロッパ原産のエゾノギシギシやナガバギシギシが在来のギシギシ属植物との間で繰り返し交雑を起こしていると推察される.本課題では,外来侵入種による,在来種の遺伝子プールの汚染がどれくらい進行しているかを明らかにし,外来侵入種から在来種を遺伝汚染から守るための方策を考案することを目的とする. 本年度は昨年に引き続き,在来絶滅危惧種のノダイオウとエゾノギシギシの2種が交雑を起こしていると推定される青森県青森市の集団について,各個体の位置情報を取得した上で,フローサイトメトリーおよび核ITS領域の解析により,交雑の判定を行った.その結果,ノダイオウは前年開花した個体は翌年開花する頻度が低下すること,エゾノギシギシや交雑個体はそのような傾向は見られないことが明らかとなった.また,交雑が生じる環境を細分化して交雑個体の頻度を調査したところ,人による干渉が大きくなるに従って,交雑個体の頻度が増加した. 上記の局所的な調査とは別に,ノダイオウとギシギシ(在来種)が外来種からどの程度,遺伝子撹乱を受けているかを広く国内の集団について,フローサイトメトリーおよび核ITS領域,葉緑体DNA変異を用いて解析を行った.純粋なノダイオウ・ギシギシの集団はほとんど見られず,在来ギシギシ属の遺伝子プールが外来種によって汚染されている実態が明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は局所個体群の解析と在来種の分布域に渡る解析の両方について,行うことができた.ほぼ予定通りの進行状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
局所的個体群の調査を,本年度は青森県以外でも行う.また,在来種の分布域全体にわたる解析を引き続き行い,外来種によるギシギシ属の遺伝子プール汚染の実態解明を国内全体で行いたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次世代シーケンサーによるゲノムリーディングは済んでいるが,プライマーの設計を次年度に持ち越したため,若干の残余が生じたものである. 平成26年度にマイクロサテライトプライマー開発を含めて,ジェノタイピングに基づく解析を行う予定で,そのために必要な経費として平成26年度請求額と合わせて使用する予定である.
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Research Products
(2 results)