2013 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化した世界における哲学的「人権」概念の研究
Project/Area Number |
24320007
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
御子柴 善之 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20339625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺田 俊郎 上智大学, 文学部, 教授 (00339574)
舟場 保之 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (20379217)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / 人権 / カント / 世界市民 / グローバル化 / 法と道徳 / 理性 / 尊厳 |
Research Abstract |
2013年度は、三回のコロキウム準備会(6月29日、10月26日、12月21日、いずれも会場は早稲田大学)と一回のコロキウムを開催した。第7回日独倫理学コロキウムは8月21日ドイツ連邦共和国ボンにある早稲田大学ボン・オフィスを会場とし、「グローバル化時代の人権II」というテーマの下、研究分担者の寺田俊郎氏、舟場保之氏、ゲストとして招聘したマティアス・ルッツ=バッハマン氏、ルトガー・ホンネフェルダー氏、そして研究代表者の御子柴善之が研究発表を行った。当日の発表順に発表題目(邦訳)を記す。寺田氏「人権と世界市民的責任」、ホンネフェルダー氏「人権と人間の尊厳とを普遍的に根拠づけることへの問い」、御子柴「グローバル化した世界における信頼と人権」、舟場氏「人権は道徳的に解されるべきか法理的に解されるべきか」、ルッツ=バッハマン氏「グローバルな公法の規範的核心としての人権」。議論の中心となったのは、人権に対するさらなる基礎として道徳や道徳的経験を認めるか、それとも人権を純然たる法・正義論の内部で論じぬくべきか、という論点である。この議論を踏まえて、2014年度の第8回日独倫理学コロキウム(開催日:9月23日、会場:早稲田大学)では「人権への問い―法と道徳」というテーマを掲げることになった。第7回コロキウムの原稿を集めた冊子は2014年度に作成する予定である。なお、第7回コロキウムでは、出席を予定していたアンドレアス・ニーダーベルガー氏が南米で講演を行う都合で出席できなかった。同氏には、第8回コロキウムにご参加いただく。 今年度の研究では、グローバル化という主権国家の枠組みを越える動向に対峙しつつ「人権」を擁護するために、どのような視野をもち、どう論じるべきかが明らかになった、とまとめることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、毎年、三回のコロキウム準備会と一回のコロキウムを開催できている。それらを踏まえて、哲学的「人権」概念にかんする議論も深まっている。論点としては次のものがある。第一に、人権の普遍性を主張するためには、カントの世界市民主義を参照することが今日なお有効である。第二に、存命中の哲学者、アーペルやハーバーマスの所説にも、人権擁護に有効な側面がある。第三に、人権の根拠として、道徳を想定するから、法・権利論の内部に留まるかについては議論が分かれるところだが、まさにそこに問題の焦点がある。第四に、グローバル化の動向は、国際連合を含む国際機関の再整備を必要とする。 また、本研究が同時に行っている翻訳『人権への権利』については、すでに訳稿が出揃い、監訳者(研究代表者・研究分担者)がそれを検討している。2014年度中の刊行が見込まれる。 なお、もっとも初期に計画していた2013年度コロキウム日本開催が、ヨーロッパ人参加者の都合で2014年度開催に変更されたこと、また、2013年度コロキウムに一名の欠席者が出たことが、達成度に若干の欠損をもたらしている。また、2014年度コロキウムでは、当初三名のヨーロッパ人研究者を招聘する予定だったが、一名(ヴォルフガング・ケアスティング氏)が手術の関係で来日不可能になったのが残念である。 ただし、研究内容としては順調な深化を遂げているので、2014年度から論文集刊行を目指した作業に入ることが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は第8回日独倫理学コロキウムを、「人権への問い―法と道徳」というテーマの下で、9月23日に早稲田大学戸山キャンパス(33号館第10会議室)において開催する。発表予定者は、研究代表者、研究分担者二名に加え、フランクフルト大学のマティアス・ルッツ=バッハマン氏とアンドレアス・ニーダーベルガー氏である。両氏には、コロキウム以外に、打ち合わせのほか、上智大学において講演をしていただく。なお、例年どおり、コロキウムに先んじて準備会を開催する。 これまでのコロキウムにおける発表原稿について、その中から優れたものを翻訳し、論文集刊行に備える。この件、2013年度の参加者であるルトガー・ホンネフェルダー氏にも依頼し、承諾をいただいている。同時に、翻訳刊行準備中のルッツ=バッハマン他編『人権への権利』について、作業を終了して今年度中に刊行する。 2015年度は最終年度であるが、第9回日独倫理学コロキウムをドイツ連邦共和国のボンで開催する。そのための準備会も2014年度中に開催することになる。本研究は、「哲学的」な人権概念の研究であるが、そこには政治哲学の方向と倫理学の方向とが含まれている。最終年度に向けて、この二つの方向を並存させつつ体系化することを試みることが、私たちの研究グループの課題である。また、カントを中心とした古典哲学への志向とベンハビブやダーウォールなどの現代哲学への志向もまた含まれている。これらを体系化することも、私たちが目指すべき点である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2014年度に第8回日独倫理学コロキウムを日本の早稲田大学で開催することを見込んで、2012年度、2013年度と意図的に未使用額を残し準備してきた。これらは、2014年度のコロキウムに際し、ヨーロッパから研究者二名を招聘するために使用される。 第8回日独倫理学コロキウムに際して、アンドレアス・ニーダーベルガー氏の往復航空券、滞在費、謝金、またマティアス・ルッツ=バッハマン氏の片道航空券、滞在費、謝金に使用する。なお、後者が片道航空券を要するのは、同氏がジャカルタにおける講演を済ませてから来日するがゆえに、帰りの航空券のみでよいからである。
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Research Products
(13 results)