2013 Fiscal Year Annual Research Report
中国道教の地理的イメージと宗教的ネットワークに関する総合的調査と研究
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24320009
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
土屋 昌明 専修大学, 経済学部, 教授 (80249268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 健郎 専修大学, 商学部, 准教授 (40439518)
大形 徹 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (60152063)
横手 裕 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (10240201)
二階堂 善弘 関西大学, 文学部, 教授 (70292258)
山下 一夫 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (20383383)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 道教 / 思想史 / 聖地 / 景観 / 宗教 / 国際研究者交流 / フランス:中国 |
Research Abstract |
中国の8世紀(唐代)までに体系化された十大洞天三十六小洞天七十二福地の洞天福地のうち、十大洞天を軸にしてこれまで調査研究を進めてきた。この十大洞天のうち、所在地の不確定な一箇所を除いた9箇所について、本年度までに初歩的な現地調査を終えた。そのうち、7箇所(王屋山・委羽山・青城山・赤城山・句曲山・林屋山・括蒼山)については、現地調査報告と基礎的な考察を発表した。ほかの2箇所(西城山・羅浮山)については、現地調査報告と基礎的な考察を作成中である。このうち2箇所(王屋山・句曲山)については、初歩的な現地調査によって生じてきた研究上の問題を明らかにするために、一歩立ち入った現地調査を進めた。それにもとづいた新たな認識についても、すでに論文として発表した。三十六小洞天については、10箇所(東岳泰山・南岳衡山・西岳華山・中岳嵩山・峨眉山・四明山・華蓋山・蓋竹山・良常山・武夷山)について初歩的な現地調査をおこなった。このうち一部(東岳泰山・華蓋山・武夷山)を除いて、現地調査報告と基礎的な考察を発表してある。七十二福地については、地肺山・蓋竹山・桐柏山など少数の現地を調査したが、福地の現地認定の調査研究そのものが進んでおらず、当該地の近辺までは調査できた場合があるだけで、まだ具体的な調査研究の実績はない。これらの現地調査報告と考察論文には、各研究分担者に分担された歴史学的文献学的研究が反映されている。 以上のうち、本年度に推進された実績は、句曲山・林屋山・良常山・青城山に関する研究である。この成果は『洞天福地研究』第4号として発刊している。このほかに、韓国の伝世美術品における道教と洞天思想の反映について、初歩的な調査をした。 また、本研究をめぐるフランスとの学術交流の研究会議(第1回日仏中国宗教研究者会議)を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までに十大洞天をほぼ調査してあるので、本年度はこれに関わる文献研究を進められた。十大洞天については、基礎的な認識を得ており、それを叙述することもある程度成果があがっている。小洞天および福地の現地調査および考察は、まだ深度が不足しているものの、十大洞天を優先するという当初の予定としてはやむを得ない。十大洞天の基礎的な現地調査と考察を終えて、通時的な研究と洞天相互のネットワークの問題、洞天を廻る巡礼のような宗教的な実践の問題、洞天の思想的なメカニズムの問題、宇宙観や身体観との関わりなどを考察する段階に来ている。 また、本年度に初歩的な考察をめざした洞天思想の東アジアにおける展開については、日本と韓国の関連資料を調査して一定程度の成果を出すことができた。この課題はこれまでの研究から大きく一歩を踏み出す基礎が作られたと思われる。 さらに、洞天思想に関するフランスの研究者との学術交流について、フランスから6名、日本から8名が研究発表をおこない、別に5名がコメンテーターとして発言する研究会議を予定通り開催できた。この会議は、本研究をめぐる課題のみならず、中国宗教史の研究における日本とフランスの学術協力、ひいては日本の中国研究における国際化に大きく貢献すると信ずるところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は十大洞天に関する通時的な文献研究を進めること、小洞天および福地の現地調査および考察を進めること、洞天相互のネットワークの問題(洞天の地理的な相互関係が宗教的な想像力に反映している可能性および洞天に現実に存在する道観相互の人的な関係や社会経済史的な関係が宗教的な想像力に反映している可能性)・洞天を廻る宗教的な行為としての巡礼の問題・洞天が壺型の宇宙観に基づく天地人三才の思考方法であるような思想的なメカニズムの問題・洞天思想と中国の哲学・思想の歴史における宇宙観や身体観との関わり、山水画における洞天思想の反映といった問題を考察する。 また、洞天思想の東アジアにおける展開について、日本と韓国とベトナムの関連資料の調査研究を進める必要がある。とくに日本における洞天思想の展開という問題において、神仏習合や修験道との比較対照研究を進める。この課題については、日本仏教史・神道史・修験道史の研究者との学術的な討論の機会を作る予定である。 さらに、洞天思想に関するフランスの研究者との学術交流について、すでにおこなった研究会議の成果を論文集として発刊する作業を進めると同時に、フランス側の成果論文を日本語に翻訳して発表する。そして二年後にフランスで本研究課題に関わる研究集会を開催する準備を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究におけるフランスの研究者との研究集会の実施で、当初予定していた人員の経費が、本人の申し出により必要なくなり、それに関わる旅費・謝金などの支出が必要なくなったため。 本研究と他の分野(日本仏教・神道・修験道、韓国・ベトナムの道教)との討論の機会となる研究集会の実施に関わる旅費・謝金などの支出に使用する予定である。
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Research Products
(30 results)