2013 Fiscal Year Annual Research Report
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24320022
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 剛 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (40409529)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂元 ひろ子 一橋大学, 社会(科)学研究科, 教授 (30205778)
アン ニ 明治学院大学, 文学部, 研究員 (70509140)
砂山 幸雄 愛知大学, 現代中国学部, 教授 (00236043)
佐藤 普美子 駒澤大学, 総合教育研究部, 教授 (60119427)
村田 雄二郎 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (70190923)
高見澤 磨 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70212016)
加治 宏基 三重大学, 学内共同利用施設等, その他 (80553487)
竹元 規人 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (80452704)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際研究者交流(中国) / 国際情報交換(中国) / 方法論 / 翻訳 |
Research Abstract |
現代中国の「知識界」に関する思想史的研究を目的とする本研究は、本年度、中国知識界を代表する学術誌『開放時代』の編集者と学術顧問を招聘することを最大の活動と位置づけた。6月に開催された「2013年『開放時代』東京会議」では、中国以降の知識人史、現代中国思想史ナラティヴの批判的省察、インターネット・メディアの社会的影響を考察する学術報告が行われた。これはまさに本研究が目的とする、各種メディアにおける知識界言説の総合的研究の趣旨に合致する企画であった。この会議については、『開放時代』2013年第5期(2013年9月)に特集が組まれた。 また、この企画では、中国に対する一方通行の理解を深めることのみならず、日本における中国認識と現代史認識を問い直し、ナショナル・ナラティヴには収まらない人文学的批判知の構築を目指し、日本の学術メディア関係者(池上善彦氏、元『現代思想』編集長)との対話も行った。 11月30日から12月1日に中国人民大学(北京)にて主催した「日本における東洋史研究の回顧と省察―増淵龍夫の研究と思考を中心に」もまた、同様の人文学的関心に立って、戦後日本の人文知における中国の人文知の意味を批判的に考察するワークショップであった。中国認識はそれを行う主体の自己省察を反映して成立するものであるということをこのワークショップで示すことができた。本研究が目指す現代中国思想史ナラティヴの構築という試み自体が同様の構造をもっていることを確認できたことの意義は小さくない。 そのほか、ノーベル文学賞作家莫言の作品『酒国』に関する批評(張旭東氏)の翻訳が『中国21』第39号(2014年1月)に掲載された。このように、本年度は当初計画を100%達成できたほか、新たな方法論も形成され、実りの多い一年であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的は、現代中国思想史ナラティヴ構築のために、現代の中国知識界の言説研究を行うことであった。その目的のために計画された活動はすべて実施されている。そして、企画の具体化から実施へのプロセスの中で、中国の現代思想史がナショナル・ナラティヴの中で自足しているとする仮定に疑問が生じ、むしろより広範な地域的パースペクティヴの下での認識の相互性及び知の相互依存性に注目することが必要であることが明らかになっていった。そのような相互的知的交流のあり方こそが人文知の本来のすがたであるという認識の下で、本年度の活動は、中国と日本の現代思想史(戦後思想史)を同時に俯瞰しながら省察する視座を重視した。こうした方法論は、本研究を遂行することによって生まれ、本研究の意義をさらに高度化するのに寄与するものであると考える。 また、研究代表者は3月下旬に2週間香港で資料調査とフィールドワーク、研究者交流を行い、中国大陸の内部的視覚のみでは捉えきれない、周縁的視点を得ることができた。まだ萌芽にすぎないが、これも今後の研究において具体的な成果へと進展していくことが見込まれる。 以上の点に鑑みて、本研究は本年度、当初計画以上の成果を得ることができたと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度より本研究課題は後半の2年間を迎える。上記のような成果をもとにしながら、今後は、従来どおりの学術雑誌を中心とする出版メディアに対する研究を継続する一方、さらに現代中国思想史ナラティヴを上述の人文知的観点から分析していく。とりわけ、ここ十数年来のグローバル化状況下における知の越境状況に鑑みて、中国の知識界を今後になっていくであろう若手研究者との相互交流を強化し、それを通じて、現代中国思想史に対する総合的かつ批評的な研究を行っていく。 研究成果の発信、社会的還元についても今後2年間で具体的に計画し、実行に移していく必要がある。まずすでに具体化しているものとしては、前年度からの継続課題として、「2013年『開放時代』東京会議」で提出された学術報告が論文として『中国 社会と文化』(中国社会文化学会)に掲載される予定となっている。『開放時代』2013年第5期への掲載とあわせ、本研究は中国語と日本語の双方によって成果発信を果たすことになる。今後の研究においても、これを範例として、研究成果を日中両言語を中心とする多言語によって発信できるよう具体的な方策を練るようにする。 成果発信の媒体としては、学術雑誌のほかにインターネット・メディアの活用可能性を探っていく。 また、本研究とは直接には関係しないが、2013年度の増淵龍夫に関するワークショップは中国国内で一定の反響があり、増淵著作の中国語版翻訳刊行に向けて出版社が動き始めた。本研究は、日本の中国人文学研究者と中国知識界との幅広いネットワークによって支えられており、間接的な社会的影響がそこから生起していく可能性は大きい。本研究の今後の推進に当たっては、本研究がこのような間接的効果を産出しうるものであることに留意しながら、中国と日本双方の社会に対して貢献しうる研究活動を展開できるよう取り組んでいきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費が当初見積もりよりも若干少ない支出で済んだため。 今年度の研究計画に基づいて使用する。
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Research Products
(22 results)