2012 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける木彫像の樹種と用材観に関する調査研究
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24320030
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
岩佐 光晴 成城大学, 文芸学部, 教授 (10151713)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅見 龍介 東京国立博物館, 学芸研究部・調査研究課・東洋室, 室長 (30270416)
丸山 士郎 東京国立博物館, 学芸企画部・博物館教育課・教育講座室, 室長 (20249915)
和田 浩 東京国立博物館, 学芸研究部・保存修復課・環境保存室, 主任研究員 (60332136)
小澤 正人 成城大学, 文芸学部, 教授 (00257205)
能城 修一 森林総合研究所, 木材特性研究領域, チーム長 (30343792)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 木彫像 / カヤ / ヒノキ / 白檀 / 柏 / 樟と楠 |
Research Abstract |
5月7日に連携研究者、研究協力者も含めて東京国立博物館で会合を開き、本年度の研究計画について話し合った。それに基づいて国内で実施した調査は以下の通りである。 (1)7月18日~21日奈良・興福寺東金堂十二神将立像12躯 (2)8月28日~31日奈良・興福寺板彫十二神将立像12面 (3)10月26日埼玉県立歴史と民俗の博物館男神坐像1躯 (4)1月12日~14日静岡・南禅寺木彫像7躯 (5)2月18日東京国立博物館開催の特別展「飛騨の円空」出品作品26躯 (2)については研究協力者の金子が実施したが、それ以外は参加可能なメンバーによって実施した。いずれについても樹種分析を行った。(1)は鎌倉時代初期の慶派の作例、(2)は平安時代後期を代表する作例であるが、いずれもヒノキと判定された。(3)は神像彫刻としては比較的大作に属し、カヤ、(4)は平安時代前期の作例であり、7躯ともカヤと判定された。(5)においては円空作品として樹種を科学的に分析するのは今回初めての試みとなるが、ヒノキとスギが主に用いられていることが判明した。いずれも木彫像における樹種選択のあり方を考える上で貴重なデータを確保できたといえる。 海外調査は8月29日~9月6日に中国の江蘇省、浙江省、上海市で実施し、メンバー7名が参加した。各地所在の博物館、寺院、植物園等を訪れ、現存する木彫像や木製品に関するデータ収集、実際の樹木の見学を行った。中国では古い木彫像の残存率は極めて低いが、木俑などの木製品も本研究の対象になりうることを確認した。また、白檀の代用材とされる柏(バク)は中国では樹種として独自に存在すること(日本には自生していない)、中国のカヤは日本のカヤと形態上ほぼ同じであること、日本で同一のクスノキとして認識される樟と楠は中国では樹種として明確に区別されることを確認した。 以上の調査で得られた成果をもとに2月18日に東京国立博物館で研究報告会を行い、総括とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来、樹種調査をなかなか実施できなかった平安時代後期及び鎌倉時代の作例について、奈良・興福寺の国宝2件を通して実施できた。かねてより懸案であった静岡・南禅寺の木彫像の調査をスタートできた。これは地元の人々の理解、河津町教育委員会、上原仏教美術館の協力を得て、今後も継続して実施できることになった。円空仏における本格的な科学的樹種調査は本研究が初めて実施したといえる。中国の木彫像の樹種調査も将来的な目標としているが、本年度の中国での調査によってその下地が少しずつ整備されてきたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
静岡・南禅寺には破損仏を含めて、平安時代前期に遡るとみられる木彫像が24体伝存しているが、本研究ではそれらの1点1点について、詳細な調書作成、専門家による写真撮影、樹種調査を実施し、その成果は報告書としてまとめ、学会のみならず、地元へも還元したいと考えている。こうした調査方式を確立し、古い木彫像がまとまって伝存する他の寺院へと広げて行く予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
静岡・南禅寺の仏像調査は対象となる作例が多いため、すべての調査を完了するには相当な日数が必要となるが、メンバーの本務の都合上、1回3日程度の日程しか確保できないため、6~7回にわたって調査を実施する必要がある。今年度はさらに1~2回程度調査をする予定であったが、実施できなかった。次年度はさらに調査回数を増やす予定である。
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Research Products
(1 results)