2013 Fiscal Year Annual Research Report
1960~70年代の概念芸術:作品の所在調査とデータ・ベース構築
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24320033
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Research Institution | The National Museum of Modern Art, Tokyo |
Principal Investigator |
中林 和雄 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, 企画課, 企画課長 (50217816)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三輪 健仁 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, その他部局等, 研究員 (50356276)
鈴木 勝雄 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, その他部局等, 研究員 (30321558)
藏屋 美香 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, その他部局等, 研究員 (30260003)
大谷 省吾 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, その他部局等, 研究員 (90270420)
松本 透 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, その他部局等, 研究員 (90150044)
桝田 倫広 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, その他部局等, 研究員 (70600881)
保坂 健二朗 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, その他部局等, 研究員 (40332142)
中村 麗子 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, その他部局等, 研究員 (50371000)
水谷 長志 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, その他部局等, 研究員 (50181889)
牧口 千夏 独立行政法人国立美術館京都国立近代美術館, その他部局等, 研究員 (90443465)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 美術史 / 芸術諸学 / 戦後美術 / 概念芸術 / コンセプチュアル・アート |
Research Abstract |
二年度目の作業は、1970年代初頭の日本における概念的な芸術動向に深く関与した美術評論家谷新氏をお招きしての、3度にわたる研究会を軸に進展した。谷氏からは、当事者ならではの豊富な知見をもとに、概念芸術の前史と呼ぶべき60年代に起こったパラダイム・シフトから、概念芸術をめぐる論争的状況が生まれた70年前後、そして動向として収束に向かった70年代半ばまでを、表面的なスタイルの問題ではなく、芸術の根幹を問い直す思想史的な観点から再文脈化すべきという刺激に満ちた提案を受けた。この研究会を通して、広義の概念芸術を、高度成長期の政治、社会、文化的条件下で生まれた批判的実践として、美術のみならず、哲学、文学、写真、映画などジャンル横断的に推進されたプロジェクトと捉える視座が固まった。 したがって、初年度から続く文献、資料調査は「美術」以外の分野に拡張され、『季刊フィルム』、『provoke』、『音楽芸術』、『パイディア』、『思想』、『現代詩手帖』、『朝日ジャーナル』、『展望』、『現代の眼』、『日本読書新聞』などを渉猟。概念的な芸術を生み出した思想史的な背景を再構成する作業に着手した。 他方で、欧米、アジアとの比較研究に関しては、歴史的に重要な展覧会カタログの収集や、近年の研究動向の吸収に努めるとともに、韓国の研究者との意見交換および同地の概念芸術の資料収集を行った。概念芸術の世界的な同時多発性という特徴から、日本国内の文脈のみならず、グローバルな視点からの分析が不可欠であることを再認識した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「概念芸術」という捉えがたき対象をどのように実証的に研究していくかという方法論の部分で試行錯誤があったが、調査の過程で細かな軌道修正を行いつつ、ようやくその道筋が定まったのは大きな進展であった。 非常に地道な作業であるが、「概念芸術」およびそれに関連する言葉の語義の変遷をたどることで、用語の混乱を整理すると同時に、概念芸術に内在する批評的な射程が明らかになった。こうした言説の分析が有効であると判明したことで研究に弾みがついたといえる。 また広義の概念芸術を多ジャンルに及ぶ知の地殻変動と関連づけて思想史的に捉え直すという目標が設定できたことにより、最終年度の具体的な作業の見通しも立った。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、これまでの研究成果の公開という観点から、東京国立近代美術館の所蔵作品展の枠組みの中で「美術と印刷物─1960年代から70年代を中心に」という特集展示を行う。国内外の概念的な芸術の動向と印刷物との密接なつながりを、本研究の過程で収集し調査した資料を含めて検証する機会となる。 それとは別に、概念芸術研究の基礎固めに資する思想史的なアプローチを、さらなる文献調査や聞き取り調査によって推進するとともに、引き続き欧米、アジアとの比較研究の可能性も追求したい。 最終的には、日本の概念芸術を、ローカルな視点とグローバルな視点の両面から立体的に捉える基礎資料の集積が目的となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画していた海外を含めた調査旅費に関して、研究の比重が文献調査に置かれたことで出張調査の必要性が減じたことに加え、日常業務との調整がつかず先送りされた出張もあるため。また、その他項目で計上していた雑費が発生しなかっことが挙げられる。 最終年度には、研究成果の発表の機会として展覧会が予定されており、外部から研究者を招いてのトークや、配布物の作成などの出費を予定している。また前年度実現できなかったアジアへの調査も、今年度実現できる見込みである。さらにまだ相当数残っている資料収集に残額を当てたい。
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Research Products
(7 results)