2013 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト太平洋戦争の「英米文学」研究―トランスパシフィックな文学的想像力と政治学
Project/Area Number |
24320055
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
越智 博美 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (90251727)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 玲一 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 教授 (70262920)
井上 間従文 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 准教授 (50511630)
吉原 ゆかり 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (70249621)
齋藤 一 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (20302341)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 英米文学研究 / 占領期 / 第二次世界大戦後 / 広島 / 沖縄 / ポスト冷戦 / 新自由主義 / 国際研究者交流(合衆国) |
Research Abstract |
本研究は、近代以降の日本が海外との交渉のなかで自己形成してきた事実に着目し、おもに日本と合衆国のあいだのトランスパシフィックな文化の相互交渉が、日本の文化および英米文学研究というアカデミズムにどのように影響を与えているかを分析する試みである。研究の3本の柱に沿い、以下、実績を報告する。 (1)英米モダニズムの(特に合衆国を介した)受容については、担当者、斎藤、吉原、越智が調査資料をもとに、遠藤不比等編著『日本表象の地政学』(彩流社、2014)に成果の一部を掲載した。(2)アメリカとの関係性において、戦後英米文学研究と日本文化が戦後のリベラリズム、現在のグローバル化および新自由主義体制に関与していることを探るテーマについては、上記3点中、とくに越智の論文が関係が深い。また米軍統治下の沖縄文化を担当する井上は、沖縄をめぐる批評において、環太平洋を横断する形で組織・編成される国民主義・民族主義の対=形象的体制に批判的視座を確保することを目的として、3名の研究者(新城郁夫氏、宮城晴美氏、徳田匡氏)を招へいし討議を行い、海外での学会発表を行った。(3)アジア太平洋研究で学会をリードする研究者・研究所とのあいだでの研究の連携体制構築については、平成26年3月に本プロジェクトの研究協力者、 カリフォルニア大学サンタバーバラ校のYunte Huang、アイオワ大学のHarilaos Stecopoulosを招聘し、ワークショップおよびシンポジウムを開催した。シンポジウムでは、Huang, Stecopoulosに加え、早稲田の石原剛先生を登壇者としたほか、井上が上記(2)で得た視点を生かして研究発表を行った。 以上のようにおおむね計画通りの研究が出来たが、残念なことに平成25年度途中に研究分担者のひとり三浦玲一を亡くした。その計画は全員で分担しながら進めていくこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における目的(1)英米モダニズムの(特に合衆国を介した)文化・文学の受容が日本の文化や日本の文学研究に与えた影響、(2)アメリカとの関係性において、戦後英米文学研究と日本文化が戦後のリベラリズムとどう関わったかについては、これまでの収集資料を生かしながら斎藤、吉原、越智ともにこの両者にまたがる論文を『日本表象の地政学』に発表できたほか、吉原、越智が海外での研究発表を行った。また井上も、(2)に関して、沖縄の研究者と研究会を行い、平成25年度末のシンポジウムで論文を発表したほか、複数の国際学会での発表を行っている。(3)について平成25年度末に海外研究者を招聘することができた。当初予定の1名(Yunte Huang)に加えて、本研究課題にグローバル化という点から有益な視点を与えてくれる研究者(Harilaos Stecopoulos)も招聘できたことで、これは予定を上回る成果だと言える。以上のように、平成25年度は、2年目の段階での研究成果発表を積極的に行い、加えて調査も進めることができたものと判断している。 (2)の目標のうち、戦後のリベラリズムと新自由主義化を分担していた三浦玲一の急逝は大変惜しまれる。ただし、三浦は遺稿として村上春樹論を仕上げ、その目標を達成していたことを付け加えておきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題については、上記のとおり、予定通りに課題を進めている状態である。ただし、現在のところ、メンバーが死去したことで、ことに目的(2)すなわち「アメリカとの関係性において、戦後英米文学研究と日本文化が、戦後のリベラリズム、ひいては現在のグローバル化と新自由主義体制にいかなるかたちで関与しているのか、文化や想像力の相互干渉という視点を入れつつ理論化をめざす。」という部分の、グローバル化と新自由主義体制に関する考察を中心的に担うメンバーを欠いている。課題を全員で埋めねばならないために、その部分の負荷が増えるが、これについては、全員ともに「理論」を担当するということで相互に了解を得ている。平成26年度についてはそれぞれがその課題を考察する際に、現代への射程を考慮に入れつつ考察するということで進めていくことで、その埋め合わせができるものと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
井上、越智ともに海外調査旅費として割り当てていたが、計画した調査には不足したこともあり、調査を見送ったため。 平成26年度の海外調査に充てることとする。
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Research Products
(17 results)