2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24320066
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
菅野 智明 筑波大学, 芸術系, 准教授 (90272088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 恭子 都留文科大学, 文学部, 講師 (10536428)
矢野 千載 盛岡大学, 文学部, 教授 (20326705)
尾川 明穂 安田女子大学, 文学部, 助教 (20630908)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 書学 / 書道史 / 文献学 / 資料学 / 日中比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、書の史的研究を支える各種関係資料の文献学的研究を、日中比較を視野に推進するものである。研究代表者・菅野智明は、特に清代に著された書法通史論について、稀覯な当該書論の存在に与しつつ、それら議論の推移に、三期の高潮期が認められることを提起した。研究分担者・矢野千載は、前漢武帝後期の隷書書法を考察し得る数少ない文字資料、北大漢簡『老子』に着目し、書法と隷変の観点から、特徴的な字例、誤写等の検討を要す字例、同一文字の異形の字例について考察を行った。研究分担者・山口恭子は、松花堂昭乗の筆跡を摸刻した巻子本『和漢朗詠集』(慶安二年刊)の検討を加え、それに異版が存在し、元和五年写本を原本とすること等を指摘する他、瀧本流門弟を想定受容者とした刊行背景も論じた。研究分担書・尾川明穂は、董其昌の「生」「熟」二語による生熟説に着目した。これは彼の代表的所説とされるが現存用例が少なく、過年次に扱った湯煥『書指』の生熟説との比較から、董説は卒爾に説かれたものと推測され、董の書論を代表する説とは見なせないとした。連携研究者・家入徳博は、書の伝書を最初に著した伊行に着目し、伝書としての『夜鶴庭訓抄』の内容と伊行自筆資料とを照らし合わせ、伊行が伝書で規範化した事項を順守していた点を導いた。研究協力者・髙橋佑太は、清代初期の書法指南書について、永字八法、執筆法、結構法などの観点からその展開を眺望し、馮武『書法正伝』等、前代の著名書論に基づく注釈から、王氏一族らのように門弟のための、より実用的な指南書の作成という動きへの転換があったことを指摘した。このように、各時代のトピックとなる書学資料が多角的な視点から検討されており、最終年度に予定している各資料の比較考察の素地はできつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各自の計画どおり、資料・文献の調査が進み、その検討結果の一端を論文および口頭発表で公表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度となる平成27年度は、これまで日本中世・近世・近代および中国古代・近世・近代と、それぞれの時代・地域の書学資料について各論的に考察してきた成果を集成するとともに、それらの比較検討を進め、その検討結果を国際シンポジウムとして公表する予定である。
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Research Products
(6 results)