2014 Fiscal Year Annual Research Report
古文書学的手法の創造による日本・西欧の社会秩序と封建制移行過程の比較研究
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24320121
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
河内 祥輔 法政大学, 国際日本学研究所, 客員研究員 (80013283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂上 康俊 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (30162275)
小口 雅史 法政大学, 文学部, 教授 (00177198)
岡崎 敦 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (40194336)
岩波 敦子 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (60286648)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 比較史料学 / 比較歴史学 / 君主発給文書 / 文字・文書 / 象徴 / 儀礼 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、最終的には、古代から中世への移行期の日本と西ヨーロッパを主たる対象として、社会秩序を維持するために発給された、主として、天皇ないし神聖ローマ帝国皇帝あるいはフランス国王による文書の様式・形態、なかんづくその機能の諸様相を比較するという新しい古文書学的手法を創造すること。そしてそこから得られる共通性・異質性を検討することを通じて、日本と西ヨーロッパにおける、文書を通じた社会秩序維持のシステムと、それを支える社会通念・法習慣の一端を具体的に明らかにすること。それらを通じて日本と西ヨーロッパ両地域における中世社会および中世国家成立の意義を再検討する可能性を探ることにある。 そのためには在独研究者の協力が必須であり、そこで3年目には、事前の予備的勉強会を引き続き繰り返しながら、最終的に年度末の3月に、日独双方の研究者を結集した、総合的な国際古文書学会シンポジウム「「儀礼」「象徴」「意思決定」-欧州と日本の比較文化史的手法から見た、古文書における機能と統治行為-」をテュービンゲン大学において開催した。それぞれが対になる日欧各4名の報告者を出し、セッション1:古代/初期中世の文書授受、セッション2:中世における文書授受、セッション3:書簡の機能、セッション4:文書に見られる記号、といったセクション立てて報告と討論を繰り返し、またそれぞれに日独双方からコメンテーターによる踏み込んだコメントをいただいた。 この開催によって、日独双方の研究者による相互理解は飛躍的に高まった。最終年度の総括に向けて十分な素材を揃えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
相互に情報不足であることが状態であるといっても過言ではない日欧比較古文書研究において、原文書を前にして、専門家の説明を受けたあと、相互に議論を続けるというスタイルは3年目も有効に機能して、それが国際古文書学会シンポジウムの大きな成果に結びついた。そのシンポジウムで設定した4つのセッションはそのまま比較のための視点となっていることが確認できた。国際古文書学会シンポジウムを3年目に繰り上げたことにより、最終年度にそれを受けて総括する時間的余裕もできた。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目の国際古文書学会シンポジウムの成果を受けて、それを双方の母国に持ち帰り、あらためて比較研究を続ける。これまで何度か繰り返された勉強会での報告もふくめて、国際古文書学会シンポジウムの全報告を再吟味して、日独双方で出版することを目指す。日本では日本語での、ドイツではドイツ語での出版を企画する。その際、古文書学に関する専門用語の相互理解可能な正確な翻訳という大きな問題がある。この問題は、すでに3年目の国際シンポジウムを実施するための準備段階においての報告翻訳の場で明らかになっていた。いくつかの翻訳をめぐっては歴史観に直結する意見の違いも明らかになってきている。これらを解決するための勉強会も開催して、精度の高い翻訳による出版を目指していく。
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Causes of Carryover |
年度末に開催された国際古文書学会シンポジウムのために報告資料と関連資料を膨大に収集して、相互理解のために翻訳作業に入ったが、直接必要な報告資料の翻訳を優先し、今後の検討に供する関連資料については翻訳完了が3月末ぎりぎとなり、あるいは4月以降に持ち越すことが確定したため、その支払処理を繰り越したことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した分については新年度前半のうちに作業を終え、支払いを済ませることとする。
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Research Products
(19 results)