2013 Fiscal Year Annual Research Report
日本古代宮都周辺域における手工業生産の分野横断的比較研究
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24320156
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高橋 照彦 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (10249906)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市 大樹 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00343004)
中久保 辰夫 大阪大学, 文学研究科, 助教 (30609483)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 考古学 / 日本古代 / 須恵器 / 瓦 / 緑釉陶器 / 篠窯 / 手工業 |
Research Abstract |
本研究の第1の柱として、昨年度に引き続き、分野横断的に手工業生産などを検討する研究会を開催した。第1回(5月7日)は、玉造や玉製品などを中心に取り上げ、文献史学から平石充氏、考古学から大賀克彦氏を迎えて研究発表と討議を行った。また、昨年度に行った西山1号窯第1次調査についても報告を行った。第2回目(7月30日)には、フィールド調査の準備として、篠窯跡群のこれまでの調査・研究成果と今後の調査方法について討議した。第3回目(8月17日)には、海外との比較研究の視点から、瓦について向井佑介氏、楽器に関して高橋照彦が研究発表をした。第4回(12月26日)は、造園を中心としたテーマで、中国庭園史や中国建築史から外村中氏と福田美穂氏、日本庭園史(遺跡調査)から高橋知奈津氏、さらに日本史の吉野秋二氏を加え、中国から日本にかけての多面的な技術や文化の比較検討を試みた。各会では、研究分担者や連携研究者の参加により議論を深めることができた。 本研究の2つ目の柱である現地調査については、平安京近郊の大窯跡群である篠窯(京都府亀岡市)を継続して対象とした。篠窯では10世紀末から11世紀頃が須恵器・緑釉陶器生産の衰退と瓦生産への移行の大画期であり、その時期の実態解明に向けて西山1号窯を調査した。調査期間は2014年8月19日から9月26日までである。まず、調査予定地について磁気探査を行い、窯が存在する可能性のある地点を絞り込み、2箇所の発掘区を設けた。その発掘の結果、窯とみられる遺構や焼土層、灰原などを確認することができた。軒瓦も含めて瓦類が多く出土し、当該地での瓦焼成が確実となるとともに、この時期では篠窯で初出土となる三叉トチンなども出土し、緑釉陶器生産も同時に行っていることが判明するなど、多くの新知見を得ることができた。窯内の掘削など詳細な調査やその検討は、次年度に継続することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における2つの柱となる活動のうちの1つとして、考古学・文献史学などの分野を越えた研究者が協業して議論する研究会を継続開催し、玉製品や造園、さらには瓦生産などに関して検討を行うことができた。また、もう1つの柱である時期・地域を限定した重点的な調査として、篠窯跡群でのフィールド調査を行い、自然科学的な磁気探査や考古学による発掘調査を行うことができ、新知見も得られた。以上のように、所期の目的を達成しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
課題共有的な現地調査として、平成25年度に発掘調査を始めた篠窯跡群の西山1号窯について、窯内や灰原内の掘削を含む発掘調査を行い、その窯の全貌を解明する計画である。また、平成24・25年度からの継続的な活動として行う分野横断的な研究会として、これまで取り上げなかった鉄製品類や、部分的に取り上げているもののいまだ議論が尽くされていない屋根瓦、陶磁器類などをテーマに取り上げて、年に2回程度開催することを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度に実施予定であった磁気探査などは、2013年度に行う形に変更になったことなどから、2012年度の使用額が当初予定より少なかった。2013年度は、1年分でみると、当初予定を越える額の執行をしているが、2012年度に予定していた探査を2013年度に行ったことや台風や長雨の影響などにより、昨年度における発掘調査期間が短くなったため、2年の範囲では使用額にいまだ差が生じている。 次年度には、2013年度において未発掘区域が多いために実施できなかった地磁気測定など、科学的な調査を行う予定にしている。次年度は、西山1号窯における遺跡調査としては最終年に当たるため、それに付随する完掘状況の写真撮影などにも費用を要する。また遺跡の発掘調査期間も長くする予定のため、例年以上の執行額になる。さらに、併行して開催している研究会についても、これまでの2年間では比較的近隣の研究者のみで行っていたが、次年度はより遠方の研究者を招き、宿泊を伴う形で行う計画にしている。そのため、3年間をトータルすると、当初の計画通りの執行になる予定である。
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Research Products
(29 results)