2014 Fiscal Year Annual Research Report
日本古代宮都周辺域における手工業生産の分野横断的比較研究
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24320156
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高橋 照彦 大阪大学, 文学研究科, 教授 (10249906)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市 大樹 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00343004)
中久保 辰夫 大阪大学, 文学研究科, 助教 (30609483)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 手工業 / 日本古代・中世 / 須恵器 / 瓦 / 緑釉陶器 / 金属器 / 東アジア・東北アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の第1の柱として、昨年に引き続き、分野横断的に手工業生産を検討する研究会を開催した。第1回(8月18日)は、瓦生産を取り上げた。本科研で発掘を行っている西山1号窯に関して大阪大学大学院生による発表、奈良・平安時代の瓦生産についての奥村茂輝氏・上村和直氏による研究発表などを受けて、考古学に文献史料も取り込んだ討議を進めた。 研究会の第2・3回目(12月22日・23日)は連続した2日にわたって開催した。第2回は、主に日本国内の金属(器)生産関係として、考古学から小池伸彦氏に平城京周辺の冶金、津野仁氏に古代武器生産、文献史学から堀部猛氏による延喜式の手工業生産に関して研究発表があり、第3回は日本周辺のアジア諸国との比較検討として、考古学から中澤寛将氏に渤海の土器、重見泰氏に新羅の土器、文献史学から赤羽目匡由氏に渤海に関しての研究発表をしていただいた。これにより、海外の事例を含め、当初予定の手工業各分野をかなり網羅でき、連携研究者などの参加により議論も深めることができた。 本研究の2つ目の柱である現地調査については、平安京近郊の大窯跡群である篠窯の西山1号窯を継続して対象とした。調査期間は第3次が2014年8月21日~9月8日、第4次が2015年2月16日から3月29日である。この結果、残存の良好な2基の窯を検出し、その生産内容や窯構造など多くの新知見を得た。また、篠窯における須恵器・緑釉陶器生産から瓦生産への移行過程も明確化でき、古代から中世への移行期の重要な資料を得た。 3つ目の柱である自然科学的な共同研究として、色彩学的な検討などを加えるために、2014年7月25日に岐阜県多治見市、2015年2月11日に滋賀県甲賀市に比較事例の調査活動を行った。このほか、西山1号窯の調査では、追加の磁気探査や地磁気年代・炭素14年代などのための試料採取も行い、新たなデータを蓄積した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の第1の柱である、分野横断的に手工業生産を検討する研究会については、ほぼ予定通りに開催することができ、予定していた議論を深めることができた。また、本研究の2つ目の柱である現地調査については、篠窯跡群の西山1号窯を発掘調査した結果、予想以上に残存状況の良好な2基の窯を検出でき、不明であった窯の構造なども解明した。しかも、2基の窯の前後関係や変遷が明らかになったことにより、当初の計画以上に、課題に関するより豊富なデータを集めることができた。残る自然科学的な分析などに関しては、現地調査がやや長引いたこともあって、まだ十分にはデータが出そろってはいないが、その準備作業は十分に進んできている。これらのことから、ほぼ順調に進捗しているものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の第1の柱である、分野横断的な研究会では、自然科学的な分析と考古学の協業についても取り上げる。その側面は、この一連の研究会で個別の発表等では言及されてきたものの、必ずしも真正面から取り上げてこなかったため、開催の意義が大きい。また、各種手工業生産に関しては、2015年度の研究会では、できるだけ各分野の研究者を一堂に会して議論する場を設ける予定にしている。このような総合的な討議においては、とりわけ技術・形態・意匠などの変遷過程とその画期など諸問題を取り上げることにしている。その成果の一部に関しては文章化することにしている。 本研究の2つ目の柱である現地調査についてだが、篠窯の西山1号窯の発掘は2014年度で終了のため、2015年度はその発掘データの検討と出土遺物の基礎的な整理を予定している。出土品の整理に当たっては、通例の整理作業に加えて、出土破片ごとに器種分類・法量・重量・残存率など各種データのシートを作成し、詳細な特徴を抽出する。これにより、上記の窯の操業の実態を明らかにし、その歴史的な位置付けも明確化したい。この成果に関しては、発掘に関する報告も作成することを予定している。 3つ目の柱である自然科学的な共同研究についても、サンプルの実際的な分析を進めることにする。具体的には、分光測色計などによる色彩の調査を引き続き行う。そして、須恵器や瓦などの化学分析を行い、原材料の供給元や流通に関するデータも蓄積する。窯の焼成温度などに関しても、製品や窯体から検討を加える予定である。さらに地磁気年代関係や、炭素14年代関係でのサンプリングも行っているため、2004年度からも協力いただいている研究協力者を加えつつ、各種の科学的な分析などを継続する。さらに、具体的なデータの分析に加え、自然科学的な各研究手法の課題などを文章化した形でまとめることも計画している。
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Causes of Carryover |
2014年度の現地調査は、当初夏季のみを予定していた。しかし、遺構の残存度が良好であり期間を要することや、天候不順などにより作業が進まなかったことなどに伴い、やむなく夏季での調査終了を断念して、2014年度末となる2015年の2・3月に改めて実施することになった。それにともない、現地調査時の撮影写真などの費用として使用予定であった額が、2014年度内での納品の見込みが立たず、残額が生じる結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度初めに、現地調査にかかわる写真などの成果の納品に伴い、残額分の費用を支出予定である。
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