2012 Fiscal Year Annual Research Report
森林の持続的管理と現場監視の制度的工夫―法の執行の観点より見た日欧比較研究
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24330030
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
交告 尚史 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (40178207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 大介 神奈川大学, 法学部, 教授 (30294820)
古井戸 宏通 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (30353840)
坂本 達彦 國學院大學栃木短期大学, 日本史学科, 講師 (20390750)
松本 充郎 大阪大学, 大学院・国際公共政策大学院, 准教授 (70380300)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 森林 / 持続的管理 / 現場監視の法制度 / 森林監視人 / 監守人 / 林業 |
Research Abstract |
広域空間である森林を持続的に管理するためには、実際に相当の頻度で現場を巡視する人材が必要である。フランスに森林監視人(garde forestier)の制度があることはよく知られているが、明治期の日本にも類似の制度が存在した。それらの制度を比較検討し、今日の日本でうまく機能する法制度を模索することが本研究の目的である。 我々は、まず問題意識の共有を図るため、平成24年5月に長野県飯田市で合宿を行った。同所を選択したのは、歴史学者である坂本が明治期の監守人制度の調査地として長野県を予定していることによる。したがって、坂本が飯田市歴史研究所の利用要領を会得できたことの意義は大きい。そして平成25年3月、平成24年度の研究の総括として、高知市およびその周辺で合宿を組み、林学者である古井戸の指導の下、焼き畑の慣行で知られる同県の森林と林業の実情について調査を行うとともに、それぞれの研究の進捗状況を確認した。 これら2つの合宿の間に、各メンバーがそれぞれの関心事について調査を実施した。交告と三浦は被災跡の残る宮城県を訪問し、同県の林業について森林組合等で聴き取りを行った。また、交告と松本は、昨今の難題であるカワウの増加に着目し、その塒になっている森林に生じている変化を探るべく、関西方面のまとめ役である滋賀県庁の担当課で聴取りを行った。三浦は「新ひょうこの森づくり」について兵庫県庁で聴取りを行い、森林と河川との繋がりに関して加古川の河川管理、鹿児島県の河川管理につき文献資料を収集した。坂本は、適宜自らのフィールドで資料収集を行った。 海外調査としては、古井戸と坂本がフランスのジュラ県にある文書館を訪問し、貴重な絵図を含む有益な資料をフィルムに収めた。坂本はフランス研究の担い手ではないが、この調査では彼の歴史学者としての素養が大いに活かされた。また、松本は単独で渡米し、同国の環境法研究者と交流し、森林と河川の繋がり具合について見聞を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
合宿を2回行ったことで、法学、林学および歴史学という異分野間の議論が深まり、協働の態勢が整った。また、林学の専門家である古井戸の立会いの下で長野県と高知県の森林を見学できたことの意義は大きい。個人レベルでみると、古井戸がフランスの文書館で成果を得たこと、坂本が資料収集のルートを幾つか開拓できたこと、松本が米国調査を実現できたことは評価できる。三浦と交告がフランス調査に同行できなかったことと、交告のデンマーク研究が文献収集のみに終わったことは反省点である。
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Strategy for Future Research Activity |
フランスの森林監視人制度の研究に力を入れる。古井戸は再度の渡仏を企画し、現地で更に資料収集を行う。三浦と交告は少なくとも行政裁判所の判例等の文献を利用して、法制度の解明に努める。坂本は、平成24年度に開拓したルートを活用して、日本の監守人制度に関する資料収集を徹底的に行う。交告はデンマーク関係の文献を読み込んで、同国の森林監視制度のあらましを把握する。松本は、米国研究を継続するとともに、高知県内でのフィールド研究の発展性を探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、全体として旅費の支出が予定したよりも低く抑えられた。交告、三浦については、海外調査に参加できなかったことがその理由である。平成25年度はできれば交告、三浦も含め全員参加でフランス調査を実施したい。古井戸、坂本、松本については、調査先への面会申込みに際してアポイントが順調に取れたといったような僥倖とも言うべき理由で旅費を削減することができた。結果として未使用金を生じたが、それは主として、古井戸については平成25年度に日本での開催が予定されている国際学会への参加、坂本については長野県と群馬県における資料調査の充実、松本にあっては米国における調査日数の増加のために費やすこととする。
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Research Products
(7 results)