2013 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化をめぐる国内政治過程の分析:計量分析から事例分析へ
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24330047
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
久米 郁男 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (30195523)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北山 俊哉 関西学院大学, 法学部, 教授 (90214824)
大西 裕 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (90254375)
曽我 謙悟 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60261947)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 政治学 / グローバル化 / 政治過程 / 日韓比較 / サーベイ実験 |
Research Abstract |
平成25年度の研究実績としては以下の通りである。 第1に、研究代表が中心となって蓄積してきた、一般有権者、国会議員、企業及び労働組合のグローバル化に関するサーベイデータに、社会・経済・政治データをリンクして分析を行い、有権者や企業のグローバル化に対する態度を説明する要因の解明を行った。とりわけ、25年度においては前年12月に実施された総選挙に際して、読売新聞社に協力して行った全候補者アンケート調査のデータを利用して、TPPが政党間の政治競争において重要な位置づけが与えられていたことを明らかにし、その実態とメカニズムの分析を上述データとも照合しつつ行った。 第2に、分担者である曽我謙吾が収集した、地方議員に対するサーベイデータを国会議員データ、一般有権者データと比較分析することで、異なるレベルにおけるグローバル化に対する態度のあり方および政党間対立の構造に違いがあることを明らかにした。なお、この観察は、地方政治レベルで国政レベルと異なる形で、貿易をめぐる政治過程が存在していることを示しており、その点を解明すべく分担者である北山俊哉が、知事に焦点を当てた分析を勧めた。 第3に、分担者である大西裕は、韓国における貿易協定締結をめぐる政治過程を日本との比較において研究し、両国間における政治制度の際がもたらした影響について分析を行った。 第4に、代表者である久米郁男は、研究協力者である直井恵(UCSD准教授)と協力して日韓の一般市民がグローバル化の諸側面に対して持つ政策選好を明らかにするために、インターネット調査会社を利用してインターネットサーベイを行った。そこでは、ランダム化実験を取り入れることによって、自由貿易に対する一般市民の支持態度が、そこから受ける利害関係によってのみ決まるのではなく、ヨリ大きな安全保障上の懸念や国民経済的考慮から影響されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1に、一般有権者、国会議員、企業及び労働組合のグローバル化に関するサーベイデータを、社会・経済・政治データとリンクして、自由貿易をめぐる政治過程を解明するデータを構築する作業は、順調に進行した。また、TPP交渉が重要政治争点となった2012年総選挙に際しての全候補者データを入手するとともに、その後の一般市民に対するサーベイ調査により上記データの厚みを増やすことが出来た。 第2に、地方政治レベルにおける自由貿易をめぐる政治対立のあり方について計量的手法と事例分析的手法による分析をすすめることが出来た。そこでは、とりわけ都道府県知事のTPPへの支持態度表明の違いを手がかりとする、事例研究的調査を進めるとともに、市町村、都道府県、国政レベルにおいて、自由貿易を含む重要な政治争点について、政党間対立のあり方が異なることが明らかに出来た点は、貿易をめぐる政治過程の解明に重要な貢献であった。 第3に、韓国における自由貿易をめぐる政治過程についての事例分析を踏まえて、日韓両国において同時に実験を組み込んだサーベイ調査を実施し、両国における類似性と相違点についての有意な観察を得ることが出来た。そこでは、安全保障上の考慮や国際的経済競争の意識が刺激されると、各個人として考える自由貿易がもたらす利害得失を超えて貿易に対する支持が形成されるという、政治学的に重要な知見が得られた。 以上の知見は、貿易をめぐる政治過程の解明という本研究にとっていずれも重要な成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、前年度に引き続き、研究代表が中心となって蓄積してき た、グローバル化に関するサーベイデータのさらなる加工整備を図るとともに、サーベイデータと結合した社会 ・経済・政治データを、個別のデータを単体として分析し有権者や企業、国会議員、地方政治家のグローバル化に対する態度 を説明する要因の分析を行う。 第2に、上記計量分析から得られる因果関係に関する「観察可能な含意」を踏まえて、その因果関係のプロセスを、関係者に対するインタビューおよび文書資料の収集と分析といった事例研究的手法によって解明する。第3に、中央政府レベルでのグローバル化にかかわる対外政策形成過程について、日韓比較事例分析を行う。 第3に、前年度実施した日韓有権者に対するインターネットサーベイ実験調査によって得られたデータの分析 を行う。そこでは「安全保障」に関する刺激が日韓両国において対外貿易への態度に影響しなかった一方で、「国家間経済競争」に関する刺激は両国において有意な効果を持つことが示された。本年度は、このデータの比較 分析を詳しく行うとともに、日韓それぞれの事例における政治的コンテクストに留意した事例分析を実施する。 第5に、日韓比較サーベイ実験の知見を踏まえて、政治アクターの行動を実験刺激とした新たなランダム化サーベイ実験を行う。そこでは、実際の貿易自由化交渉において事例分析的に観察された政治過程や自由貿易を支 える福祉政策の役割に関する先行研究を踏まえ、その背景にあるメカニズムの解明を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究協力者である直井恵教授の来日、および研究代表の海外旅費の支出および、パソコンソフトの更新をせずに残額を次年度に残した。当初予定していたよりもネット調査のサンプル数を増やすためであり、25年度のネット調査費用に充当するためであった。 日本と韓国で行ったサーベイ実験調査において、実験刺激の種類を増やすために、サンプル数を増やすことになりその費用に計上した。
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Research Products
(11 results)