2014 Fiscal Year Annual Research Report
高度化する中国産業集積の研究:空間経済学とエリアスタディの融合的アプローチ
Project/Area Number |
24330072
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
日置 史郎 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (80312528)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丁 可 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (10450545)
唐 成 中央大学, 経済学部, 教授 (20424187)
曽 道智 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (60284345)
中島 賢太郎 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60507698)
陳 清目 東北大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (90626102)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 中国経済 / 産業集積 / 空間経済学 / 地域経済学 / イノベーション / アップグレーディング / バリューチェーン / クラスター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は空間経済学班と実態調査班の2グループによって構成され、両者の知見を併せて、近年の環境変化の中で高度化を迫られている中国の産業集積にとって有益な知見を引き出すことを目的としている。 空間経済学班の今年度の研究実績は主に以下の三点に要約される。1、産業集積がグローバル化するなかで、企業の生産を部分的に海外で行うアウトソーシングやオフショアリングが活発化していることに着目し、その変化のパターンを理論的に明らかにし、研究成果を学術誌に公表した。2、自国市場効果の理論・実証成果の乖離について考察し、研究成果を学術誌に公表した。3、中国に進出した日系企業の企業間リンケージと集積の問題を実証的に分析し、研究成果を学術誌に公表した。 実態調査班の今年度の研究実績は主に以下の三点に要約される。1、前年度の分析を引き継いで、中国のアパレル製造業・輸送機械製造業・通信設備製造業について、その集積の効果を分析し、初歩的成果をディスカッションペーパーとして公表した。2、2013年度に実施した中国の携帯電話産業集積に対するアンケート調査の結果について、初歩的な分析を行った。分析結果の一部を広東省発展研究センターへ報告したところ、同省の集積における情報ネットワークの存在を確たるデータで示した初めての本格的研究である、という評価を得た。3、上場企業データを使用した中国企業の資金調達行動全般に関する実証分析を行い、学術誌に公表した。また、浙江省の繊維産業集積における企業調査データに基づき、産業集積における中小企業に対するリレーションシップバンキングの問題を初歩的に考察した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
空間経済学班は、自国市場効果をめぐる理論分析と実証分析との間のギャップを埋める考察を行う計画を掲げていたが、これは所期の目標を果たすことが出来た。地域間競争をめぐる考察は、これは依然進行中であり、当初計画よりもやや遅れている。しかし、これは一つにはフットルースキャピタルモデルの再検討を踏まえて分析をブラッシュアップするためであり、もう一つには、新規基幹産業の育成や有力企業の誘致をはかるために、浙江省の土地払い下げ取引に関する良いデータが入手出来たため、地方政府が工場用地の使用権を安価に企業へ払いさげる形の(隠された)補助金提供が地域の産業集積形成や産業構造にどのような影響を与えているかを、課税競争の問題とあわせて考察する必要が出てきたためである。つまり研究が深化した結果である。 実態調査班は、所期の計画内容を概ね実施することが出来た。深センで実施している携帯端末製造業のアンケート調査の結果回収が調査会社の問題によってやや遅れているため、研究成果の公表に影響を与えたが、初歩的な分析にはすでに着手することが出来ており、今年度の成果結実が期待出来る。産業集積の中小企業への地元金融機関によるリレーションシップ融資という新しい考察に取り組み、すでに初歩的な分析結果が生まれてきている。 以上から、中国の産業集積の高度化に関わる理論的・実証的分析が、数多くの論点について着実に行われたと判断出来る。
|
Strategy for Future Research Activity |
空間経済学班は、以下の数点を中心とした研究を実施する。1、社会厚生の観点から産業集積と国際貿易の効果を分析する。とくに、移動不可能な土地と移動可能な資本のそれぞれが社会厚生に対して与える影響の違いを明らかにする。2、ほとんどのフットルースキャピタルモデルにおける生産関数では、移動可能資本を固定投入とし、移動不可能な労働を限界投入とする仮定が使用されているが、これらの役割を逆にすることでより解析が簡単になることが去年の研究からわかった。そこでこの簡単な枠組みによって、多産業の集積状況を調べる。3、現実の世界では、固定投入も、限界投入も資本と労働を同時に必要とする。そこで本年度は、生産活動に対してより一般的な仮定をもうけて、フットルースキャピタルモデルを再検討する。4、上記の2と3の結果をうけ、国家間・地域間の課税競争をより一般的な仮定のもとで検証し、実証的な検討を行う。 実態調査班は、主として以下の数点を中心とした研究を実施する。5、深センの携帯端末製造業に対しておこなってきた調査結果を用いて、中国の携帯製造業のバリューチェーンおよびクラスターの特徴を分析する。6、江蘇省の各種製造業の産業集積と関連するグローバルバリューチェーンの高度化に関する実証分析を行う。7、産業集積の高度化と企業移転を促進するために中国の沿海地域の地方政府が行っている産業集積の実態と特徴を分析する。8、集積における企業の資金調達活動をさらに実証的に分析する。以上の目的のために、積極的に海外研究者や実務家を招聘し、研究コンファランスを開催する。 なお、実態調査を実施する際には、被調査対象から調査および調査結果の公表などに関する同意をとりつけるなど細心の注意を図る。 両班とも、最終的な研究成果を積極的に学会において報告し、学術雑誌において論文として公表する。
|
Causes of Carryover |
深センの携帯端末製造業者に対して行っていた現地調査(第2回)を中国現地の社会調査会社に委託していたが、その調査が遅延しているため、支払いが遅れていることが主な理由である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
第2回調査はまもなく終了して、支払いに入るため、使用計画は正常に戻る。
|
Research Products
(24 results)