2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24330090
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
赤林 英夫 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (90296731)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 教育経済学 / 政策評価 / 社会実験 / 自然実験 / 経済政策 |
Research Abstract |
近年、我が国の教育政策現場において、教育政策の経済学的評価に対する理解は進んだが、政策と成果の間の因果関係をバイアスなく推計するための制度設計に関する理解はいまだ十分とは言えない。本応募課題では、諸外国の教育政策評価で広範に利用されている実験的手法(自然実験、社会実験)を用いた研究を推進することとした。 社会実験アプローチとしては、当初の予定通り、東日本大震災で被災した子どもに対し学校外教育で利用可能なバウチャーの配布を行うNPOと連携し、バウチャーを得た子どもと得なかった子どもの双方を追跡調査している(共同研究者は荒木宏子、中室牧子、田中隆一)。特に、バウチャー受給者の一部を抽選により決定し、受給者群と非受給者群の双方を追跡している点で、我が国では画期的な政策実験である。まず5-6月にかけて、バウチャー受給者と非受給者の全員を対象に、平成23年に実施した事前テストと同等の内容の第2回調査を実施した。しかしながら予定通りの回収率が上がらなかったため、調査内容を精選し、第3回目調査を予定よりも前倒しし11月に実施した。現在、実際のバウチャー利用記録データの確認を行いながら、バウチャーを受け取って塾等の外部教育機関を利用した子どもと、選考からもれて外部教育機関の利用が困難のままとなった可能性のある子どもの学力等の「伸びの差」の分析を行っている。 自然実験アプローチについては、赤林・中村(2011)を改訂し、少人数学級が学校間格差へあたえる影響の考察を加えたAkabayashi and Nakamura(2012)とし、現在英文専門誌に投稿し2回目のリバイスが終わったところである。また、一昨年より取り組んできた幼児教育の長期効果の論文(Akabayashi and Tanaka2013)を完成させ、英文専門誌に投稿したところである。 さらに12月に教育経済・教育政策コンフェレンスを慶應義塾大学で実施した。特に、実験的な手法による教育政策分析の発表が多く集まり、活発な議論が行われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年5-6月にかけて、バウチャー受給者と非受給者の全員を対象に、事前テストと同等の内容の第2回目調査を実施したが、必ずしも予定通りの回収率が上がらなかったため、調査内容を精選し、第3回目調査を予定よりも前倒しし11月に実施した。その結果、第2回調査を上回る回収数を得ることができ、現在(H25年)そのデータを分析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在(H25年)、クーポン利用開始から1年後に行われた学力調査等のデータを分析しており、平成25年度中に論文にまとめる予定である。追加的長期調査について、支援団体と協議を行う。また、同様の事業を行っている自治体等との連携を模索する。H24年に引き続き教育経済学に関する研究集会を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
直接経費次年度使用額が生じたのは、第3回目調査で調査対象者への謝礼を引き上げ、最大限の回収率(80%)を想定した調査予算を前提として前倒し支払い請求を行ったためである。結果的にはそれよりも低い回収率(53%)となったため、その差額が繰り越しとなった。H25年度は、現在のクーポン利用者への継続調査をどのように行うか、支援団体と協議中である。H24年同様の規模の調査を行った場合でも現在の予算で十分対応可能と考えている。
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Research Products
(6 results)