Research Abstract |
本プロジェクトは「ミディアム・タームな景気循環メカニズムの解明と政策分析への応用」という研究課題に基づき,理論・実証の双方向およびグローバルな視点から,ミディアム・タームな景気循環メカニズムの解明を試み,総合的に分析・検証するものである2012年度は,研究実施計画に沿いベンチマークとなるモデル開発のため基礎となる研究,およびメカニズム解明のためにモデルに基づく実証分析を行った。具体的な研究内容は以下の通りである. 1)Ryo Jinnai,"News Shocks and Inflation" 本研究は海外共同研究者である陣内了による論文である,具体的な研究の概要は以下の通りである.将来の生産性のショック(ニュース・ショック)は,インフレ率を下げる性質が実証的に明らかにされている.この実証的事実が,資本ストックの導入されたニューケインジアン・モデルのインプリケーションとは整合的でないことが知られている.本研究は,ニューケインジアン・モデルを改良することによって,資本ストックを導入したモデルにおいても,実証結果と整合的なインプリケーションを得られることを示したものである. 2)Kensuke Miyazawa and Junji Yamada,"The Japanese Current AccQurlt:Why Does It Still Remain High?" 貯蓄率の低下は通常経常収支を下げる効果を持つが,1990年初頭以降,貯蓄率が低下する中で,日本の経常黒字は高い水準にあった.日本の貯蓄率の低下については,世代重複(Overlapping Generations:OLG)モデルを用いた先行研究において,高齢化や生産性の動向の影響であることが明らかにされている。本研究では,開放経済に拡張したOLGモデルを構築し,日本とその他のOECD諸国及び中国の人口と生産性データを用いて,日本の貯蓄率の低下と同時に経常黒字の動向について分析を行った. 3)Ryo Jinnai,"R&D shocks and News Shocks" 本研究は,従来外生的なものとして扱われることが一般的であったニュース・ショックを,ブラックボックスとして扱わず,本質的な経済的意味を与える試みである.具体的には,R&D活動の生産性へのショックが,ニュース・ショックとして解釈することができることを理論的に解明し,現実のデータとも整合的な結果を得た. さらに2012年12月15日(土)・16日(日)「DSGE コンファランス2012」(広島大学東千田キャンパス)を共催した.当科研構成員の他,海外共同研究者である陣内了を招聘し,国内外の研究者と幅広い意見交換を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミディアム・タームな景気循環メカニズムの解明のため,以下の視点から十分な成果を得ていることから,概ね順調に進展していると判断した.一方はグローバルな視点から1980年代以降の日本の経常収支の動向を世代重複モデルに基づく実証分析によって説明した点である.もう一方で,ニュース・ショックおよび研究開発というミディアム・タームな景気循環の重要な要素について,モデル分析によってそれぞれの理論的メカニズムの解明を行うことができた点である.
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