2012 Fiscal Year Annual Research Report
移動レジームの動態に着目した社会階層と雇用・生活リスクの融合的研究
Project/Area Number |
24330146
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 嘉倫 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (90196288)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 浩 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (40272504)
竹ノ下 弘久 上智大学, 総合人間科学部, 准教授 (10402231)
今井 順 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (30545653)
阪口 祐介 桃山学院大学, 社会学部, 講師 (50589190)
森山 智彦 同志社大学, 社会学部, 助教 (00547903)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 社会学 / 社会階層 / 移動レジーム / 雇用・生活リスク / 日本型雇用福祉レジーム |
Research Abstract |
本年度は各班がそれぞれの研究活動を推進するとともに、3回の全体会議(内1回は村田学術振興財団研究助成によるものである)を開催して研究成果に関する情報交換を行い、全体的な方向性と成果を確認した。具体的な研究成果としては、現代日本社会における雇用・生活リスクが特定の社会集団(非正規雇用者や失業者、女性等)に偏在していることを統計データにより確認し、なぜそのような偏在が生じているのかについて理論的な検討をした。その成果として、次のような社会的メカニズムが明らかになった。戦後日本社会においてホワイトカラーとブルーカラーの身分格差が解消される過程で非正規雇用者の問題は顕在化されず、正規雇用者だけが日本型雇用福祉レジームの庇護下に置かれるようになった。このレジームと男性稼ぎ主モデルが高度経済成長期に確立し、それなりの安定したシステムが維持された。その後グローバリゼーションや新自由主義などのグローバルな変動が生じたが、その変動はこのシステム全体に影響を及ぼしたわけではなく、労働市場の周辺部分に大きな影響をもたらす一方で、中核部分にはあまり影響をもたらさなかった。このことは従来の日本型移動レジームの変容をもたらし、急速に変動する現実とそれに対応しない制度の間にギャップを生みだした。そして、そのギャップに非正規雇用者が陥っている。 従来の研究では正規雇用者と非正規雇用者の格差が指摘されてきたが、なぜそのような格差が生じるのかについて説得的な説明はあまりなされてこなかった。上記の議論はこの説明を提示するものであり、研究プロジェクトメンバー間の議論から生まれた重要な研究成果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各研究メンバーが自分の研究を深化させるとともに、その研究を研究プロジェクト全体の中に適切に位置付けていて、メンバー間の連携がうまくいっている。このためメンバー間のコミュニケーションがスムーズに進み、書籍、論文、学会報告等で活発に成果を公表することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果を踏まえた上で、さらに分析のための理論枠組を整備する。その枠組を用いて移動レジームの変容と社会階層と雇用・生活リスク分布の変動との連関を戦後日本の歴史的変遷に沿ってさらに詳細に分析するとともに、東アジア社会を対象とした比較分析も推進する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年2月の全体会合の際に参加を予定していた2名の海外共同研究者が家庭の事情等により参加できなくなった。このため直接経費次年度使用額411,072円が生じた。これについては平成25年度請求額とあわせて会合や国内外の学会報告のための旅費に使用する予定である。
|