2012 Fiscal Year Annual Research Report
東南海・南海地震に対する地域社会の脆弱性とプリペアードネスに関する実証的研究
Project/Area Number |
24330151
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
黒田 由彦 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 教授 (30170137)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 重好 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 教授 (50155131)
丹部 宜彦 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 教授 (90212125)
丸山 康司 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 准教授 (20316334)
高橋 誠 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 教授 (30222087)
青木 聡子 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 講師 (80431485)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脆弱性 / プリペアードネス / 地域社会 / 南海トラフ巨大地震 / コミュニティ / ガバナンス / 復興 |
Research Abstract |
東日本大震災は2万人に及ぶ犠牲者を出した。これは戦後最悪の数字である。明治維新以後で見ても、関東大震災に次ぐ。伊勢湾台風以後、災害対策基本法が制定され、防災に国家予算が大量に投下された。堤防や防潮堤が建設・強化された。防災マップが作られ、防災訓練も行われた。地域コミュニティのレベルでも、防災自主組織がつくられ、訓練や啓蒙活動を行ってきた。つまり、一言でいえば、戦後日本社会は防災に関して、ハードとソフトの両面で様々な対策を講じてきたのである。それにも関わらず、阪神大震災で5千人、東日本大震災で2万人という死者を出した。なぜだろうか。 東日本大震災の被災地を対象として調査を行った結果、わかってきたのは、「防災対策をしたのにも関わらず被害が大きかった」のではなく、その逆に、「防災対策を行ったが故に、被害が大きくなった」という逆説的な事実である。防災対策の基本はハード整備である。堤防、防潮堤の整備である。その整備に当たっては被害想定が行われる。被害想定は、地震学等の「科学的」根拠に基づいてなされる。実際、伊勢湾台風以後、同程度の台風が襲来しても同等の被害は出ていない。想定内の災害に関しては、防災に成功しているのである。しかし、ひとたび想定外の災害が起きると、被害は甚大になる。阪神淡路大地震がそうであり、東日本大震災同様であった。まさか神戸で直下型地震が起きるとは想定されていなかった。 東北でマグニチュード9のプレート型地震が発生すると予測した地震学者はいなかった。「想定外」の災害だったのである。「想定外」は起こらないとされ、それに対する対策は社会的に無視された。歴史的に津波被害の常習地だった地域においても、海岸に近いところに宅地が造成された。そこは津波で壊滅的な被害を受けた。注目すべきは、津波警報が発令されても逃げなかった人々が多かったことである。「どうせ津波は来ないだろう」「もしも津波が来てもここまでは来ないだろう」と考えて避難しなかったと予測される。子供たちが自発的に逃げて命が助かった釜石の例が「奇跡」と称される所以である。まさに、この「想定外」が生み出すメカニズムは、社会的な脆弱性であると言えるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災の被災地の調査に基づいて脆弱性がどこに潜んでいるかを明らかにしてきた。また、東南海・南海地震の防災対策推進地域の自治体を対象とするヒアリング調査を行った。プリペアードネスについては、災害発生時における自治体間支援について、東日本大震災を題材に行政組織を対象としたアンケート調査を行った。以上の点から、研究がおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に沿って研究課題を推進していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
米国のカトリーナ災害および中国の四川省大震災に関して、緊急対応から復旧・復興をどのような機関がどのような方針で実行したかについて直接調査を行う予定であったが、文献・資料・Web等でかなりの情報が収集可能であること、また中国の場合は災害に関する行政の研究所の所員が来日した折りに情報を収集できたために、実施しなかった。そのための費用が繰り越されたものである。市町村のヒアリングのための旅費に充当するなど、有効活用を行う予定である。
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Research Products
(8 results)