2013 Fiscal Year Annual Research Report
東日本大震災における遺族への心理社会的支援プログラムの開発と検証に関する研究
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24330183
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Research Institution | Ryukoku University Faculty of Junior College |
Principal Investigator |
黒川 雅代子 龍谷大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (30321045)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白井 明美 国際医療福祉大学, その他の研究科, 准教授 (00425696)
坂口 幸弘 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (00368416)
瀬藤 乃理子 甲南女子大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (70273795)
高橋 聡美 つくば国際大学, 保健医療学部, 教授 (00438095)
中島 聡美 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, その他部局等, その他 (20285753)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 遺族支援 / 行方不明者支援 / 支援者の支援 / 複雑性悲嘆 / 喪失 / 子どものグリーフプログラム / 認知行動療法 / あいまいな喪失 |
Research Abstract |
本研究は東日本大震災で突然家族を喪った遺族への心理社会的支援プログラムを開発することである。プログラム開発においては、以下の3つのプロジェクトに分かれて研究を実施している。 1.支援者研修プログラム:(1)遺族支援のための講座、(2)「あいまいな喪失」に関する事例検討会、(3)過去の震災の経験を学ぶシンポジウム、(4)支援者のストレス緩和のための講座を実施した。支援者のストレスや共感性疲労に関しては、データを分析し論文化しているほか、あいまいな喪失に関しても、その支援者支援の方法をまとめた。被災地の遺族および行方不明者向けのウェブサイトは、適宜、情報の更新をはかった。 2.遺族・遺児支援プログラム:仙台市および陸前高田市で各月に2回子どものグリーフプログラムを実施し、同時に保護者の会も開催した。また宮古市及び釜石市でも一人親家庭の分ち合いの会やパパクッキングを地元自治体と開催した。福島市、いわき市においては勉強会などを開催し今後グリーフプログラムを展開する予定である。 3.複雑性悲嘆の集団認知行動療法・筆記を用いた認知行動療法プログラム:複雑性悲嘆の集団認知行動療法のプログラム(全6回)を Shearら(2005)の複雑性悲嘆療法やResickら(2002)の認知処理法等を基に開発した。このプログラムの安全性と内容の修正のために、健常大学生・大学院生10人に実施した。プログラム中に有害事象の訴えはなかった。 Wagner(2006)らの開発した複雑性悲嘆のための筆記を用いた認知行動療法プログラムを邦訳したプロトコルをもとに、全10回(週2回、45分間の筆記)のメールを用いた筆記課題を施行した。全プログラムを5名の参加者が終了している。全参加者に、複雑性悲嘆、うつ症状の軽減がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進捗状況については、各プロジェクトによって、少し異なっている。以下、プロジェクトごとの達成度についての詳細を記載する。 1.支援者研修プログラム:被災地の支援者向けに実践している研修は、理論と実践を踏まえ、さまざまな角度から実施した。悲嘆講座は、理論と実践の両面を網羅し、最新の悲嘆研究やセルフケアについて等、参加者の幅広いニーズに対応した形で実施した。また、あいまいな喪失に焦点をあて、被災地の事例をもとに、アメリカのP.Boss博士にスカイプでコンサルテーションを受けた。過去の震災から学ぶという視点で、阪神・淡路大震災や中越地震、中越沖地震、長野県北部地震での支援者で構成されたシンポジストでシンポジウムを開催した。共感性疲労に焦点をあてた研修会も開催した。ほぼ想定していた人数の参加者に来ていただき、参加者から高い評価を得た。支援者のストレスや共感性疲労に関しては、データを分析し、論文化しているほか、あいまいな喪失に関しても、その支援者支援の方法をまとめた。被災地の遺族および行方不明者向けのウェブサイトへのアクセス数も安定している。 2.遺族・遺児支援プログラム:遺族・遺児のグリーフプログラムの実践は岩手県及び宮城県では軌道に乗って活動できている。福島県においては、参加者が少ないという課題がみられている。当初計画していたグリーフプログラムのディレクター・アドバンス研修をハワイで行い、現在のグリーフプログラムを再考している状況である。 3.複雑性悲嘆の認知行動療法プログラムの開発:集団プログラムについては、当初の予定通りにほぼ研究が進んでいる。プログラムを開発し、健常者を対象に安全性を確認し、内容についての改善点等意見を収集した。 複雑性悲嘆のための筆記を用いた認知行動療法プログラムについても、臨床群に対して施行し、安全性の確認を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策についても、プロジェクトごとに記載する。 1.支援者研修プログラムの開発:2年間実施してきたプログラムを検証するために、支援者に対してインタビュー調査を実施する。また行方不明者遺族支援のための事例検討会を開催し、日本における行方不明者家族支援の研修プログラム構築を目指す。今年度は、成果報告のために時間を費やしていく。 2.遺族・遺児支援プログラムの開発:プログラムの評価を今年度は実施する予定である。遺児・保護者へのインタビュー調査を行い必要な支援を模索する。 3.複雑性悲嘆の認知行動療法プログラム:集団認知行動療法プログラム開発については、昨年度の結果を基にプログラムを修正・洗練し、被災地等遺族の支援者を対象に予備施行を実施し、安全性の確認、内容についての意見を求め最終的なプログラムを決定する予定である。 複雑性悲嘆のための筆記を用いた認知行動療法プログラムについては、プログラムの有効性を検証可能な参加者数の増加を図り、複雑性悲嘆の改善を生みだす要因についても検証する予定である。
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Research Products
(18 results)