2012 Fiscal Year Annual Research Report
鉄系超伝導体の新規な多軌道物理現象と超伝導発現機構
Project/Area Number |
24340081
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
紺谷 浩 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (90272533)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 祐司 京都大学, 理学部, 教授 (50199816)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / 鉄系超伝導体 / 銅酸化物高温超伝導体 / 重い電子系 / 輸送現象 / 量子臨界現象 / 軌道揺らぎ / スピン揺らぎ |
Research Abstract |
2008年に発見された鉄砒素系超伝導体は、銅酸化物化合物に次ぐ高い転移温度Tcを持つ高温超伝導体である。超伝導とは無縁と考えられてきた鉄の化合物における高温超伝導現象の発見は物性物理における大事件であり、超伝導発現機構の研究が世界中で精力的に進展している。 鉄系超伝導体中の電子は、鉄の3d軌道に由来する「軌道自由度」を獲得するため軌道整列や軌道揺らぎといった興味深い物理現象が発現し、これらは超伝導発現機構と密接に関連すると考えられる。我々は、平均場近似を超えた様々な理論解析手法を開発し、多体電子状態や超伝導発現機構における軌道自由度の重要性を明らかにしてきた[1,2]。さらにTcに対する不純物効果[3]やTc以下の中性子散乱実験[4]などの理論研究を行い、超伝導状態に関する重要な知見を得た。 近年、鉄砒素系超伝導体やルテニウム酸化物など様々な強相関電子系において、電子系の面内4回対称性が自発的に低下する「電子ネマティック秩序」が発見され、新規な相転移現象として注目を集めている。この現象は量子効果が重要であり、平均場近似では説明できない。そこで我々は、自己無動着バーテックス補正法囹や2次元繰り込み群法[6]などの新しい理論手法を開発し、その正体が軌道整列現象であるという結論を得た。 [1]S. Onari and H. Kontani, Phys. Rev. Lett. 109, 137001 (2012) [2]H. Kontani and S. Onari, Phys. Rev. Lett. 104, 157001 (2010) [3]S. Onari and H. Kontani, Phys. Rev. Lett. 103, 177001 (2009) [4]S. Onari, H. Kontani, and M Sato, Phys. Rev. B 81, 060504(R) (2010) [5]Y. Ohno, M. Tsuchiizu, S. Onari and H. Kontani, JPSJ 82, 013707 (2013) [6]M. Tsuchiizu, S. Onari and H. Kontani, arXiv/1209.3664.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標であった、超伝導ギャップの3次元構造の解析が成功し、日本物理学会やアメリカ物理学会でその成果を発表することができた。さらに研究成果を論文にまとめ、現在Phys.Rev.B誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
鉄系超伝導体の正常状態の相図の統一的理解を目指す。特に、現在未解明である、構造相転移温度上で発現するネマティック秩序状態について、軌道秩序に着目した解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
自己無動着バーテックス補正法による、超伝導発現機構の研究を完成させる。
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Research Products
(5 results)