2013 Fiscal Year Annual Research Report
放射性核種トレーサーのアンサンブルデータ同化と移流拡散沈着過程の高精度解析
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24340115
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
関山 剛 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 主任研究官 (90354498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
出牛 真 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 主任研究官 (00354499)
五十嵐 康人 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 室長 (90343897)
眞木 貴史 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 室長 (50514973)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 気象学 / データ同化 / 大気化学 / モデルシミュレーション / 移流拡散過程 / 放射性核種 / 原子力事故 / アンサンブル解析 |
Research Abstract |
グループ1[データ同化とアンサンブル解析] 気象庁で開発されたアンサンブル気象データ同化システムNHM-LETKFとアメダス観測データを組み合わせて水平解像度15km、3km、500mの客観解析値(=風向・風速・気温・気圧・湿度・降水など大気の状態を最尤推定して3次元の格子点情報として記録したデータセット)を作成した。2011年3月の福島を対象とした詳細な(解像度3kmあるいは500m)客観解析値をデータ同化によって作成したのは世界初である(これまでは気象庁が現業予報で作成した5km解像度の解析値が最も詳細であった)。この客観解析値を移流拡散沈着モデルに入力することによって、福島原発事故による大気汚染と土壌汚染をシミュレーションすることに成功した。 グループ2[領域化学輸送モデルの開発] 気象庁非静力学領域気象予報モデルNHMに化学輸送計算モジュールを組み込んだモデルNHM-Chemの開発(およびそれを放射能モデルとして使うための改良)を順調に進めた。また、ラグランジュタイプの移流拡散沈着モデルを独自開発し、NHM-Chemと計算結果の比較を行った。 グループ3[観測データの収集] 福島原発事故直後に観測された日本各地の放射性核種濃度観測値や空間線量観測値の収集と解析を引き続き進めた。これらの観測データは様々な機関で個別に保管されているものが多い。その提供を依頼し研究に用いることができる状態でアーカイブすることは極めて手間のかかる作業である。 グループ4[放射性物質放出量の逆推定] 平成24年度から引き続き、世界各地の放射性セシウム濃度観測値と我々の全球エアロゾルモデルの計算結果を組み合わせて、ベイズ統計学的な放出量逆推定を行った。その推定値はグループ1で活用され、福島原発事故による大気汚染のシミュレーション精度向上に大いに役立った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年計画の2年目である本年は福島原発事故発生当時(2011年3月)の東日本をカバーする客観解析値(風向・風速・気温・気圧・湿度・降水など大気の状態を最尤推定して3次元の格子点情報として記録したデータセット)の作成およびその高解像度化・高精度化が最優先課題であったが無事に達成できた。また、非静力学領域化学輸送モデルNHM-Chemの開発も順調に進んでいる。我々が独自に作成した福島原発事故セシウム放出量推定値(=時系列値)は、それを利用したシミュレーションモデルの再現精度を高めることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
さらなる高精度な移流拡散沈着シミュレーションのためにはアンサンブル解析とセシウム濃度観測値のデータ同化が有効であろうことは明らかである。アンサンブル解析のためには高品質なアンサンブル初期値が必要であり、その作成には過去2年間に我々が蓄積したアンサンブルデータ同化の知識が役に立つ。セシウム濃度データ同化を実現するためにはその観測値を広汎に入手することが必須であり、シミュレーションモデルの改良も必要になってくる。これらの作業を当初計画通り順調に進めていきたい。 ただし、気象研究所の電力事情に起因するスーパーコンピュータの縮退運転は過去2年間に引き続き次年度も厳しく実行される予定であり、さらにスーパーコンピュータの機器更新(数ヶ月間の運転停止と新規機器へのプログラム移植作業が伴う)が次年度末に行われる予定となっている。そのため、シミュレーション計算やデータ同化計算の遂行に非常に大きな制約が課されることになる。したがって、創意工夫によって計算量の削減に取り組む一方、スーパーコンピュータによる計算をクラスタコンピュータへ移植することも検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究協力者との打合せのために計画していた国内出張の一部を中止したため、次年度への繰越金が発生した。 H25年度に行う予定であった研究協力者との打合せを次年度に行う。そのための国内出張旅費として使用する。
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Research Products
(27 results)