2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24340129
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
前田 晴良 九州大学, 総合研究博物館, 教授 (10181588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 源吾 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 研究技術専任スタッフ (50437191)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 層位・古生物学 / 化石 / タフォノミー |
Research Abstract |
H25年度は,まず蝦夷層群(北海道),宮古層群(岩手)および和泉層群(兵庫)などの白亜系および北米ネバダ州の三畳系などで野外調査を行い,オルステン型化石鉱脈の保存ついて詳細な野外調査を行った.その結果,中型-大型アンモナイトの掃き寄せ産状中に,他の海生動物の糞粒ペレットが集積している産状を発見した.これらアンモナイトの掃き寄せ産状中のサンプルは,オルステン型化石鉱脈を生む『汚物だめ保存』としてはまだ糞粒ペレットの密集度が低いが,オリジナルの光沢や干渉色を保つケイソウ化石等,非常に保存状態の良い化石が含まれていることがわかった.また,3D化石の産出頻度が高いことが予測される有望なサンプルが得られた.現在,繊細で脆弱な3D化石を壊さずに取り出す最適な処理方法を模索しながら,慎重に処理をすすめている最中である. 他方,蝦夷層群の化石群とは時代や地域のまったく異なる地層中にオルステン型化石鉱脈に比較できる例があることを共同研究者とともにつきとめた.例えば中新統・対州層群(長崎県・対馬)には,日本海のオープニング時に温暖かつ富栄養な環境下で堆積した特殊な黒色有機質の石灰岩が含まれる.その中に糞粒ペレットが密集する層準があるのを発見した.その岩質の特徴はカンブリア紀後期のオルステンの模式層序(スウェーデン)に非常に良く似ており,付属肢を保った介形虫の遺骸などが3D保存されていることが期待される.ただし,この石灰岩は続成作用や構造変動のため方解石スパーやセメントの再結晶化が進んでいるため,現在,最適な処理法を共同研究者とともに開発中である. これらの結果を踏まえ,オルステン型化石鉱脈についての予察的な検討,および関連する化石の産状について研究成果の一部をまとめ,学術誌に公表した.また大学博物館での特別企画において,一般市民に研究成果の一部を実物標本を見せながら解説した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
詳細な野外調査および観察の結果,オルステン型化石鉱脈の保存のカギとなる糞粒ペレット密集層を,白亜系蝦夷層群など各地に分布するさまざまな時代の地層や化石群から見いだすことに成功した.また,中新統・対州層群(長崎・対馬)から新たにオルステン型化石鉱脈が保存されている可能性の高い層準を見つけるなど,予想外の成果や進展があった.以上の点では,当初の計画以上に順調に進展している. 一方,軟体部保存を示す3D化石は非常に貴重な上に化石自体が繊細で壊れやすく,母岩から取り出す際に雑に処理すると粉々になって元も子もなくなる恐れがある.そのため,岩石からの化石の抽出には焦りや拙速は禁物である.したがって化石の剖出にあたっては,ケースバイケースで試験サンプルを使って最適な手段を見極めながら安全第一で慎重に作業を進めているところである. 以上を総合すると,本課題は現時点でほぼ予定どおりの進捗状況であると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度は,引き続き白亜系・蝦夷層群など有望なフィールドを選んでオルステン型化石鉱脈の野外調査を進め,3D化石保存層の地質学的・堆積学的な特徴を明らかにする.同時に3D保存の化石の最適な処理方法に目処をつけ,糞粒ペレット層からの3D化石の取り出しを軌道に乗せたい.そしてオルステン型化石鉱脈の成因の検討および遺骸が3Dで保存されるメカニズムについての仮説作りに進みたい. 他方,本研究課題に沿った比較検討の結果,オルステン型化石鉱脈とは全く別のプロセスで軟体部が保存されている化石の産状を見いだした.例えばレバノン・白亜系の石版席石灰岩中の頭足類化石については,予察的ではあるが化石保存の新しい作業仮説を立てるヒントが得られた.まだ観察途上であるが,これは予想外の進展である.もし時間的余裕があれば,オルステン型化石鉱脈とは別タイプの化石層についても比較検討を進めたい. なお得られた成果は,そのつど学会誌等に公表すると同時に,ホームページや普及講演会で一般市民に還元する予定である.
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[Journal Article] Late Triassic ammonoid Sirenites from the Sabudani Formation in Tokushima, Southwest Japan, and its biostratigraphic and paleobiogeographic implications2013
Author(s)
Tsujino, Y., Shigeta, Y., Maeda, H., Komatsu, T., and Kusuhashi, N.
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Journal Title
Island Arc
Volume: 22
Pages: 549―561
DOI
Peer Reviewed
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