2013 Fiscal Year Annual Research Report
高分子材料創製を基軸とする高性能な逆型有機薄膜太陽電池構築のための基盤技術の確立
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24350092
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高橋 光信 金沢大学, 物質化学系, 教授 (00135047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 勝浩 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (90303669)
桑原 貴之 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (80464048)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 有機薄膜太陽電池 / 新規ドナー材料 / 逆構造 |
Research Abstract |
光電変換効率(PCE)を決定する要因の一つである開放電圧(Voc)はドナー材料のHOMO準位とアクセプター材料のLUMO準位の差に依存することが知られている。我々はこれまでに、チエノチオフェン(TT)側鎖のエステル部位にパラ置換フェニル基を導入したπ共役高分子(PTB)を合成し、それらの分子軌道準位が置換基の電子吸引性の違いにより制御できることを見出している。本年度は、これまでの成果を基軸として、分子軌道準位のより精密な制御を目指し、2種類のTTユニットの組成比が異なるPTB系ポリマーを合成した。得られたポリマーの薄膜状態における吸収スペクトルを測定したところ、フルオロフェニル基の導入率(r)が増加するに従い、吸収領域が長波長側へシフトし、バンドギャップ(Eg)が小さくなった。ポリマー薄膜のX線回折の結果から、rが増加するにつれてπ-πスタッキング間隔が狭くなることが分かった。この結果は、エステル結合を介して導入した側鎖のフルオロフェニル基が主鎖の平面性を高めていることを示唆しており、吸収スペクトルの結果とも一致している。ポリマーのHOMO準位を大気中光電子分光法により求め、rに対して相関見ると、HOMO準位とrの間には良好な線形的相関がみられ、ドナー材料の分子軌道準位を合目的的に制御可能であることが明らかとなった。それらを発電層材料に使った素子の電池性能を評価した。フルオロフェニル基の導入率が75%(r=0.75)の新規材料PTB-F75をドナーに用いたとき、従来のP3HT:PCBM系のVoc (0.57V前後)に比べて約120mV増加し、PCE 4.3%を示した。また、2時間の大気中連続光駆動においても保持率9割以上の高い耐久性を示した。さらに、電極をAuからAgに変えることにより、反射光による有機発電層での再吸収によって光電流が増加し、PCEが4.5%まで向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、高分子材料合成グループが開発した幾つかの新規ドナー共役高分子材料を、素子開発グループが素子への応用を行い、従来のドナー・アクセプター系であるP3HT:PCBM系よりも高いPCEが得られたため、達成度を「(2)おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、素子開発グループと高分子材料合成グループとで連携し、新規ドナー材料を用いた高効率化研究に取り組む。また、耐久性についてはまだ十分な成果が得られておらず、いくつかの知見から有機発電層/キャリア捕集層界面に電池特性を保持できない原因があることを予想している。したがって、来年度は効率向上を目指しながらも、有機発電層/キャリア捕集界面に着目して化学的なアプローチによる層間制御を行うことにより、高い耐久性を有する高性能素子の開発を今後の課題としたい。
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