2014 Fiscal Year Annual Research Report
自己組織化レドックスネットワークによる脳型デバイスの創成
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24360011
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 卓也 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50229556)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脳型デバイス / 確率共鳴 / 分子ネットワーク / 酸化還元 / クローンブロッケード |
Outline of Annual Research Achievements |
巨大ポリオキシメタレート(POM)であるMo154-ring単一分子の電気特性を電気伝導性原子間力顕微鏡を用いて計測し、電流-電圧特性の取得に成功した。POM分子はドーナツ型構造を持つが、金電極表面上では、ドーナツが寝た形で吸着し、0.5Vに立ち上がりを持つことが分かった。DFT計算との比較から、電流の立ち上がりはMo原子のd軌道に由来するものであると結論づけた。さらにMo154-ringは基板上で2次元ネットワークを形成すること、またこのネットワークは室温でも極低温でも電流-電圧特性が規格化可能な同じ線形を示し、強い非線形性を有することが明らかになった。 一方、分子ネットワークの電気伝導を支える分子として、自己ドープ型ポリアニリンに着目した。ポリアニリンは、一般にポリマー集合体の間隙に酸をドープすることで、窒素原子がプロトン化する。ところが、自己ドープ型では、分子内にスルホン酸基を有するため、ポリアニリン単一分子鎖でも本質的なドーピングが可能であるため、ナノスケールネットワークにおける単一あるいは少数分子バンドル部位でも、十分な電気伝導性が期待される。単分子層レベルの非常に薄いポリアニリンネットワークを形成し、ナノギャップ電極を用いた電気特性計測を行った。しかし、結果は、単一分子レベルでは電気伝導性を示さず、ナノスケールの太さを持つバンドルが形成されて、はじめて電気伝導性を示した。活性化エネルギーはきわめて低いにも関わらず、厚膜に比べて導電率がきわめて低いことがわかった。導電率の低い理由が、低いキャリア密度のためか、あるいはナノバンドル間の電子ホッピングの効率が低いのかを明らかにするため、分光エリプソメトリを組み合わせた研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の最大の目的である複数刺激の重ね合わせによる演算に到達するためには、閾値特性を持つ分子をナノスケールのネットワーク上に配置すること、および複数電極間で十分な電気伝導性を確保することが必要である。今年度、巨大ポリオキシメタレートであるMo154-ringの電気特性について研究を行い、本質的な電子伝導特性として、急峻な立ち上がりを示す非線形特性を得た。この分子については、ノイズ発生や負性抵抗など、興味深い特性が報告されているので、さらにPOM分子に関する研究を継続する必要がある。この分子のネットワークにおける特性やデバイス構築には、さらなる研究が必要で、研究全体の遅延が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度の研究で、巨大ポリオキシメタレート(POM)分子のネットワークについて、プロトン伝導と電子伝導を分離することに成功した。2015年度は、本質的な電子伝導について明らかにし、さらに高いバイアス化におけるノイズ発生やヒステリシス特性について詳細な研究を行う。POMネットワークに電極を配置し、複数刺激の重なりによる確率共鳴演算の試みを行う。
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