2014 Fiscal Year Annual Research Report
諫早湾と北部有明海におけるバロクリニック構造の動的変化
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24360200
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
矢野 真一郎 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80274489)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田井 明 九州大学, 学内共同利用施設等, 助教 (20585921)
杉原 裕司 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (70243970)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有明海 / 諫早湾 / 淡水影響域 / ROFI / 乱流微細構造 / 河川プリューム / 物質輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
現地観測については,計画通り夏季2回,冬季2回の計4回の観測を実施できた.また,国が計画していた諫早湾締切堤排水門の開門調査については,調査反対派が起こした裁判の判決の結果により調査実施ができない状況が継続している.したがって,開門調査前の現地調査についてのみ実施できた.一方で,有明海に連結する八代海についても,昨年同様調査を行い,バロクリニックな流れによる物質輸送について調べた. 次に,数値シミュレーションについては,汎用型沿岸域流動モデルであるDelft3Dにより開発済みの有明海-八代海結合3次元流動モデルを用いて,諫早湾締切堤防の有明海と諫早湾における塩淡成層への影響の評価を行った.その結果,貧酸素水塊が発達する小潮期では影響が小さく,それが解消する大潮期では影響が大きいという結論を得た.これは,これまで有明海問題を議論する際の前提とされている考え方を覆すものであり,重要な知見といえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した4回の現地調査は無事に実施でき,夏季の2回では期待した出水時の調査に成功した.また,数値モデルを用いた解析では,諫早湾締切堤防による塩淡成層への影響評価を行い,一般的に貧酸素水塊の発達が見られる小潮期においては,その影響が小さいという重要な知見を得ることができた.以上より,概ね順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年である平成27年度については,以下の計画を立てる. まず,昨年度に計画通りに実施できた現地観測について,夏季のみ追加で実施する予定にしている.計画としては,梅雨時期である6月から7月に2回(大潮期と小潮期),筑後川起源の淡水による河川プリュームの動態に関する調査と,北部有明海と諫早湾における成層構造の調査javascript:onSave();を実施する計画である.担当は,研究代表者の矢野と研究分担者の田井が中心に行うが,乱流モデルのパラメタリゼーションに関する調査については,研究分担者の杉原も同行する予定である. 数値シミュレーションについては,3年間開発してきた数値モデルを用いて,1年から数年単位の長期的なハインドキャスト・シミュレーションを実施し,バロクリニック構造の長期的変化傾向について抽出を試みる.特に,GPVデータを活用した時空間分布を考慮した風況の入力,JCOPEデータを活用した開境界条件の入力などについてさらに改良を加える計画である.担当は,研究代表者の矢野と研究分担者の田井が中心に行う. さらに,上記現地調査から得られるバロクリニック構造の動的変化の情報,ならびに数値シミュレーションから得られた結果を総合して,研究成果を矢野が総括する.
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Causes of Carryover |
公的機関から取得予定のデータ整理の人件費として計上した分が,取得に時間がかかり次年度入手になったため,次年度へ繰り越すため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データ整理の人件費として使用を予定している.
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