2013 Fiscal Year Annual Research Report
安定同位体及びオミクス手法を用いた琵琶湖天然有機物の環境動態の解明と生態影響評価
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24360216
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 芳久 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20226260)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日下部 武敏 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (40462585)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 湖沼環境 / 環境動態 / 生態影響評価 / 琵琶湖 / 天然有機物 |
Research Abstract |
近年、琵琶湖をはじめとする湖沼において難分解性有機物の増加・蓄積が報告されるなど、水圏における有機物の環境動態やその生態系への影響に注目が集まっている。しかし、通常の機器分析により明らかにできる成分は有機物全体の10-20%程度と言われ、湖沼有機物の起源や水環境中における環境動態および機能・役割についてはほとんど明らかにされていない。本研究では、琵琶湖流域における有機物の環境動態を分子レベルで明らかにするとともに、その生態影響を評価することで、流域圏における天然有機物(NOM)の機能・役割の解明を目指すものである。 H25年度は、長期間分解性試験の結果より、湖内生産(藻類由来)有機物のみならず、陸域・森林から流入してくる有機物の寄与も少なからずあることが示唆された。また、確立した藻類光合成阻害試験を琵琶湖溶存有機物に適用し、10倍程度の濃縮で光合成阻害活性を検出できることが明らかとなった。さらに、湖沼の難分解性溶存有機物への寄与が指摘されている下水二次処理水に本試験法を適用した結果、1-10倍程度の濃縮で光合成阻害活性を検出できた。本試験法は、既存の試験法(OECD等)と比べて、簡便かつ短時間で結果を得ることができるだけでなく、高い感度を有していることが明らかとなった。 一方、3次元蛍光スペクトルの解析手法(EEM-PARAFAC)を立ち上げ、琵琶湖北湖における有機物の動態について予備的な検討を行ったところ、明瞭な変動は観られなかったものの、有機物組成の水深プロファイルの季節変動を捉えることができた。 今後は、安定同位体標識化と環境オミクス手法を用いて湖沼有機物の分解挙動等を分子レベルで明らかにする予定である。また、これらの成果と併せて有機物樹脂分画やTC検出-高速サイズ排除クロマトグラフィ等の手法を組み合わせて琵琶湖天然有機物(NOM)の総合的な特性評価を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MSおよびNMRを用いた環境オミクス手法による詳細な分解挙動の解明では若干遅れがあるものの、これまでに報告のない琵琶湖天然有機物の藻類光合成阻害試験結果が得られるなどの成果が順調にでている。さらに、3次元蛍光スペクトルの多変量解析やTC検出-高速サイズ排除クロマトグラフィ等の手法によって興味深い成果も得られつつある。したがって、研究全体の達成度としては、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、過年度までの成果を踏まえ、引き続期総合的な水質調査を実施する。琵琶湖NOMの環境動態の解明と定量化に向けて13C等で標識化された試薬を用いて13C標識化した藻類由来有機物を実験室内で調整し、分解性試験等の実施によりその分解特性等をMSあるいはNMR等の手法を用いて分子レベルで明らかにする予定である。一方、湖沼有機物の物質循環。分解過程にはバクテリアが重要な位置を占めており、13C標識化グルコース等の安価で代謝経路全体に炭素が流れやすい標識化試薬を用いることにより、琵琶湖NOMの生分解反応産物(難分解性有機物)を究明する。本研究で得られた結果と、併せて実施する有機物樹脂分画(DAX-8)や3次元蛍光分析-平行因子解析(EEM-PARAFAC)、TC検出-高速サイズ排除クロマトグラフィ等の手法で得られた結果を組み合わせることで、琵琶湖NOMの総合的な特性評価を行う。H26年度は最終年度にあたることから、これまでの成果を踏まえつつ、研究成果の最終とりまとめを行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
安定同位体試薬は種類によっては納期が非常に長いことから、翌年度の初めに購入して実験を実施することにしたため。 次年度使用額は、安定同位体試薬の購入に使用する。また、H26年度が最終年度であることから、データ整理・解析等の研究・実験補助への謝金に使用する計画である。
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Research Products
(5 results)