2013 Fiscal Year Annual Research Report
キメラ受容体を用いたヒトiPS細胞の未分化維持・増幅と分化技術の開発
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24360337
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長棟 輝行 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20124373)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | iPS細胞 / キメラ受容体 / シグナル伝達 / 未分化維持技術 / 増殖・分化技術 |
Research Abstract |
本研究では、サイトカイン受容体の細胞外ドメインを一本鎖抗体(scFv)に置換したキメラ受容体を構築して細胞膜上に発現させ、安価な抗原の添加によって遺伝子導入細胞の分化を誘導するシステムの構築を進めている。 昨年度はマクロファージ様細胞株の破骨細胞への分化を実証し、本研究の手法が分化シグナルを代替可能であることを示した。そこで、本年度は、キメラ受容体を用いた造血前駆細胞の未分化維持増殖の可能性について検証した。マウスインターロイキン-3依存性造血前駆細胞株である32Dcl3細胞は、種々のサイトカイン刺激により増殖・分化が制御されることが知られている。そこで、抗フルオレセイン一本鎖抗体(scFv)とマクロファージコロニー刺激因子受容体(c-fms)、エリスロポエチン受容体(EpoR)、またはトロンボポエチン受容体(c-mpl)の細胞内ドメインとを連結したキメラ受容体遺伝子を構築し、32Dcl3細胞に導入して発現させ、インターロイキン3非存在下で抗原であるフルオレセイン標識BSAを添加して受容体のオリゴマー化を誘導し、増殖を誘導できるかどうかを検証した。その結果、いずれのキメラ受容体導入32Dcl3細胞においても、抗原依存的な増殖促進効果が見られた。また、32Dcl3細胞は顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)により顆粒球に分化することが知られている。そこで、キメラ受容体を抗原刺激することによって増殖を誘導された細胞が、分化ポテンシャルを保持しているかどうかを顆粒球分化マーカーであるCD11bの細胞表面発現をフローサイトメトリーで検出した。その結果、分化マーカーの陽性率には差はあったものの、いずれのキメラ受容体シグナルで増殖させた細胞もG-CSF添加により顆粒球分化が促進されていることが分かった。以上より、本手法により造血前駆細胞の増殖シグナルを代替できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、造血前駆細胞の増殖誘導に関して、それを達成するための基盤となるキメラ受容体を構築し、血球前駆細胞株に導入して機能解析を行った。その結果、3種類のキメラ受容体を用いて造血前駆細胞株の増殖誘導を達成できた。昨年度の分化誘導の実証と併せると、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、キメラ受容体を用いた増殖および分化誘導を実証することができた。今後は、本研究の手法を用いて前駆細胞の増殖および分化の経時的な制御ができるかを検証し、本研究の有用性をさらに実証していきたい。またES/iPS細胞にキメラ受容体を導入し、増殖・分化の制御ができるかを検証していきたい。
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Research Products
(20 results)