Research Abstract |
色々な分野で発生する熱エネルギーの大部分は,現在,未利用のまま捨てられている。熱電発電は,地球温暖化対策とも相まって,この廃熱エネルギーを回収する小規模なエネルギー変換システムとして期待されている。しかし,従来の熱電材料は重金属等の有害化危惧物質を含んだ材料が多く,環境負荷の少ない材料が望まれている。この点において酸化物熱電材料は環境負荷が少なく,金属の熱電材料では問題になる高温大気中における安定性も高い。 化学量論比からずれた不定比金属酸化物半導体は,酸素の欠乏量,過剰量によりキャリア濃度を制御可能である。 不定比組成を厳密に制御できれば,有用な熱電材料になる。一方,燃焼合成法の一種であるフラッシュ合成法は,任意の不定比組成を有する不定比金属酸化物をサブマイクロメートルの粒子径で合成可能な手段であり,酸化物熱電材料を作製するのに非常に有用な方法である。このため,フラッシュ合成法を粉末酸化物の製作に適用し, 1.p型熱電半導体の最適組成の検討 p型熱電半導体材料に関しては,これまでの研究で卓越した熱電性能を持つ酸素過剰型チタン酸化物を候補材料とし,チタンと酸素の不定比性(組成比)と熱電特性の関係を明らかにした。 2.n型熱電半導体の選定,最適組成の検討 不定比金属酸化物のうち,酸素欠乏型でn型を示すチタン酸化物,亜鉛酸化物を中心に材料を絞り込んだ。 3.金属酸化物粉体の固化成形方法の検討 フラッシュ合成法により直接合成された不定比酸化物の粉体を固化成形するポイントは,高温で焼結する際に合成された材料の不定比を変えないことである。そのためには,短時間で焼結を完了させることが重要である。一般的な雰囲気炉やホットプレスでは,焼結を行うのに数時間から数十時間を要してしまい,その間に不定比性が変化する可能性が高い。このため短時間で焼結することが可能な手法として,パルス通電焼結法の基礎検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
1.n型熱電半導体の最適組成の検討:本年度で絞り込んだn型熱電半導体における組成の最適化を行う。 2.金属酸化物粉体の固化成形方法の検討:本年度で研究した焼結手法,微細な不定比金属酸化物粉体を用いた,焼結条件等,固化成形条件の最適化を行う。 3.研究成果の発表:本年度と同様に積極的に成果の発表を行い,他の研究者からの助言,批判を受ける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現有装置の改造を予定していたが,代替装置購入の方が安価かつ本研究に適していると判断し,代替装置を購入した結果,改造費との差額が発生した。 次年度は「金属酸化物粉体の固化成形方法」に研究の重点を置くので,関連する装置の購入に使用する。
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