2013 Fiscal Year Annual Research Report
シロイヌナズナ初期胚発生におけるパターン形成の制御機構
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24370022
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
中島 敬二 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 准教授 (80273853)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 植物 / 発生分化 / 胚発生 / シグナル伝達 / 発生制御 |
Research Abstract |
1.RKD遺伝子の多重変異体の作製と胚における表現型の解析: 5つのRKD遺伝子すべてにT-DNA挿入変異体が存在するが、rkd4以外の単独変異体に顕著な異常は見られない。また公開されているマイクロアレイデータから、RKD5遺伝子は胚発生後にも発現することが示唆されている。今年度は5つのRKD遺伝子すべてについて、GUS遺伝子を用いたレポーターラインをそれぞれ数ラインずつ確立した。今後はこれらを用いて胚発生後も含めた詳細な発現解析を行う。また昨年度までにRKD遺伝子間の多重変異体の作製を試みているが、rkd2変異体を用いて交配した場合、後代において異常な分離比が観察される問題が生じている。今年度の様々な交配結果から、使用しているrkd2挿入アレルに何らかの転座が起こっている可能性が示唆された。そこでRKD2遺伝子の新たなT-DNA挿入アレルをストックセンターから取り寄せて解析した。これらのうち1つはプロモーター領域、他の1つは5’非翻訳領域、もう1つはイントロンにT-DNAが挿入されていることが確認された。このうち5’非翻訳領域にT-DNAがホモに挿入されている個体で、わずかな形態異常がみられることから、後代における表現型を確認する必要がある。 2.RKD遺伝子機能の進化的保存性: 陸生植物の進化の基部に位置するゼニゴケのゲノムに、RKD4の相同遺伝子が1つ存在し、この遺伝子が卵細胞で強く発現していることが明らかとなっている。またこの遺伝子をノックアウトした雌株では、生殖器官の発生が遅延することが分かっている。このノックアウト株における造卵器の発生を調べたところ、造卵器そのものは正常に発生するものの、卵細胞の成熟が起こらないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
rkd変異体の交配実験はrkd2変異アレルの異常な分離比が障害となって進展が遅れていたが、用いた変異アレルに特異的な問題である可能性が明らかとなった。そこで新たな変異体を探索したがエキソンにT-DNAが挿入したラインは見つけられなかった。一方で、5’非翻訳領域にT-DNAが挿入したラインを同定することができ、このラインのホモ接合体が形態異常を示すことが示唆された。これによりRKD2遺伝子の特異的な機能を解析することができるようになり、他のRKD遺伝子の変異体との交配実験も合わせて、RKD遺伝子ファミリーの生物学的機能を解析する準備が整った。ゼニゴケRKD相同遺伝子については、順調に機能解析が進展し、RKD遺伝子が配偶子や初期胚において進化的に高度に保存されたリプログラミング機能を担っていることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.RKD遺伝子の多重変異体の作製と胚における表現型の解析: 昨年度までに5つのRKD遺伝子すべてについて、GUS遺伝子を用いたレポーターラインを確立した。今年度はまずこれらを用いて胚発生後も含めた詳細な発現解析を行う。またrkd2の新たな変異体アレルにおいて、わずかな形態異常が示唆されている。今年度はホモ接合体の後代において、植物体と胚発生を詳細に観察し、RKD2の生物学的機能を明らかにする。またすべてのRKD遺伝子を対象に、様々な組み合わせで多重変異体を作製する。上記のレポーター解析で得られる発現パターンを勘案し、それぞれのRKD遺伝子が、初期胚においてどのような機能を担っているのかを明らかにする。 2.RKD遺伝子機能の進化的保存性: ゼニゴケRKD遺伝子のノックアウト株で卵細胞の成熟以上がみられている。しかしノックアウト株は雌株のみが得られており、雄株の造精器や精子形成のおける機能は解析できていない。また雌株は卵が成熟できないため交配により雄のノックアウト株を得ることは不可能である。そこでRKDノックアウト株をRKD遺伝子を含む別の導入遺伝子コピーで相補させ、これを交配して雄株を得たのちに相補遺伝子コピーを除くことで雄のノックアウト株を得ることを計画している。これによりゼニゴケの雄株におけるRKDの機能が明らかになることが期待される。また雌株における卵成熟の異常を、顕微鏡観察やトランスクリプトーム解析によって、詳細に特徴づけする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、研究補助員を1年間雇用することを予定していたが、本課題における実験量の都合により半年の雇用で済ませた。これにより生じた人件費は翌年度以降に繰り越し、翌年度分の人件費と合わせてより専門的な知識をもつポスドク研究員の雇用に充てることとした。また海外の共同研究者を訪問するための旅費の支出を計画していたが、研究科から旅費が支出される別の用務と合わせることで、科研費から旅費を支出せずに済ませた。 今年度の繰越金は、主に翌年度のポスドク研究員の人件費に充当する。
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Research Products
(4 results)