2012 Fiscal Year Annual Research Report
赤痢菌エフェクターの複合体構造解析による感染機構の解析
Project/Area Number |
24370049
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
水島 恒裕 兵庫県立大学, 大学院・生命理学研究科, 教授 (90362269)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | エフェクタータンパク質 / 赤痢菌 / X線結晶構造解析 / 複合体構造 / OspI / ユビキチン経路 |
Research Abstract |
赤痢菌は粘膜上皮細胞を介して感染・定着し炎症性下痢を引き起こす病原体である。赤痢菌の感染は0157やサルモネラ属菌などと同様に、III型分泌装置と呼ばれる特殊な注入装置を通じてエフェクターと呼ばれる病原因子が宿主細胞に分泌されることで成立する。赤痢菌が宿主内に分泌するエフェクターは約30種類存在し、免疫系や細胞接着に関連する宿主内タンパク質を標的として働いている。 エフェクタータンパク質のひとつOspIは炎症シグナル経路の制御に重要なTRAF6の活性化に必要なユビキチン結合酵素Ubc13と結合し、100番目のグルタミンを脱アミド化する脱アミド化酵素である。OspIによるUbc13の認識機構およびOspIの反応機構の解明を目指し、OspIとUbc13複合体、OspIの活性部位変異体のX線結晶構造解析を行った。OspIは野生型では脱アミド化反応後Ubc13がOspIから解離することから活性部位の変異体であるOsplC62Aを用いてOspI-Ubc13C62A複合体を精製し、結晶化、X線結晶構造解析を行った。OspI-Ubc13複合体構造は2.96A分解能で決定した。その結果、OspI-Ubc13複合体はOspIの電荷を持った分子表面と疎水性の分子表面によりUbc13と結合していることが示された。これまでにUbc13と結合するユビキチンリガーゼTRAF6、CHIPとUbc13の複合体構造が報告されている。これらの酵素との構造比較よりOspIはUbc13認識において、多くの相互作用により複合体を形成していることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤痢菌エフェクタータンパク質OspIとユビキチン結合酵素Ubc13の複合体X線結晶構造解析に成功し、立体構造をもとにした機能解析より赤痢菌タンパク質によるユビキチン結合酵素の特異的認識機構を明らかにした。また、本研究成果はJournal of Biochemistry誌に投稿し受理された。
|
Strategy for Future Research Activity |
OspI-Ubc13複合体構造解析結果をもとにTRAF6を介した免疫系阻害機構の構造生物学的な解析を行う。さらに、他の作用機序により宿主の防御系を阻害する、赤痢菌エフェクタータンパク質IpaHユビキチンリガーゼやOspEの構造解析を進める。
|