2013 Fiscal Year Annual Research Report
免疫プロテアソームサブユニットPSMB8遺伝子の二型性の進化
Project/Area Number |
24370094
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野中 勝 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40115259)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 免疫プロテアソーム / 二型性 / 平衡選択 / MHC |
Research Abstract |
PSMB8は免疫プロテアソームのプロテアーゼ活性を有するサブユニットの一つであり、MHCクラスI分子によって提示される抗原ペプチドの産生に主要な役割を果たしている。MHC領域に存在するPSMB8遺伝子は多くの種において二型性を示し、切断特異性を決定すると考えられている31番目のアミノ酸残基が、Alaなどの側鎖の小さな疎水性アミノ酸であるAタイプと、Pheなどの芳香族アミノ酸であるFタイプが知られている。これまでの研究により、サメと下位条鰭類は5億年に渡って起源の古い2系統 (A系統とF系統)を保存してきたこと、及び上位条鰭類や四足類はF系統を失っており、メダカやツメガエルではA系統内でFタイプを再生することにより、二次的に二型を回復していることを明らかにしてきた。今年度は条鰭類の13目、26種の解析を行い、F系統はヒメ目以下の各種には存在するが、ハダカイワシ目以上の各種からは検出されず、F系統の喪失がヒメ目の分岐以降、ハダカイワシ目の分岐以前に起った事を明らかにした。また、ウナギ目各種からはF系統の配列のみが検出されたが、その一部は31番目にAlaを有しており、A系統を失った後にF系統内でAタイプを再生し、二型性を復活させていることが明らかになり、PSMB8遺伝子の二型性に対して強い平衡選択が働いている更なる証拠が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脊椎動物の全分類群について、PSMB8遺伝子の二型性の分布を明らかにする事を目標にしてきたが、前年度の両生、爬虫類に続いて今年度は多くの条鰭類を解析する事ができ、PSMB8遺伝子の二型性の進化過程の大筋は明らかになったと言える。また、ウナギ目においてPSMB8遺伝子の二型性の新たな進化パターンがみつかり、この二型性はこれまでに知られていたものとは比較にならないくらい強い平衡淘汰を受けている事が明らかになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
PSMB8遺伝子の二型性の進化に関して、大分類群毎の情報はほぼ得られたので、より細かい単位で変化している可能性を検討する。特にこれまでの結果から推定される水棲と二型性の存在の関係を検証する為に、二次的に水棲を獲得したクジラ、イルカ類にPSMB8遺伝子の二型性が存在するかどうかを明らかにする。また、前例のない強力な平衡淘汰のメカニズムとして、PSMB8遺伝子が交配相手の選択に関わっている可能性を、A型とF型がほぼ1:1になる様に集団で維持しているゼブラフィッシュを用いて検証する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
多分類群にまたがる解析用のサンプルの入手に予想以上の時間がかかり、昨年度内にその解析を完了する事ができなかった。そのため、解析用試薬等の消耗品の使用量が当初の予定より少なかった。 既に入手済みで未解析のサンプル、及び今年度入手すべく手配済みのサンプルの解析を迅速に進めるために、実験補助者一名を雇用する。
|
Research Products
(4 results)