2013 Fiscal Year Annual Research Report
産業酵母Yarrowia lipolyticaにおける脂質代謝機構の解明
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24380045
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
太田 明徳 中部大学, 応用生物学部, 教授 (30125885)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 酵母 / Yarrowia lipolytica / n-アルカン / 脂肪酸代謝 / 遺伝子発現調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
酵母Yarrowia lipolyticaのn-アルカンと油脂の代謝経路とその調節を解明し、本酵母の特性を物質生産に生かすために必要な知見を得ることを目的として研究を行い、以下の成果を上げた。 1. YAS1、YAS2、YAS3を介するn-アルカンによる制御の解析 n-デカン感受性を示す転写制御因子Yas3pの遺伝子破壊株、及び小胞体タンパク質でn-アルカン代謝に関わると考えられるScs2pの遺伝子破壊株について、復帰変異株の分離を試みたところ、SCS2遺伝子破壊株についてのみ得られた。 2. n-アルカンの水酸化以降の脂肪酸生成に至る過程の解明 Y. lipolyticaのゲノム配列から、S. cerevisiaeやヒトの脂肪族アルデヒド脱水素酵素と相同性を持つタンパク質をコードすると推定される4つの遺伝子、HFD1~HFD4を見いだした。これらを全て破壊した株では、細胞抽出液中の脂肪族アルデヒド脱水素酵素活性が大きく低下するとともに、n-アルカンを資化できなくなった。またHFD1~HFD3の転写はn-アルカンにより誘導された。蛍光タンパク質と連結した融合タンパク質を用いてこれらの局在を観察したところ、Hfd1p~Hfd3pは小胞体又はペルオキシソームに局在することが示唆された。以上の結果から、Hfd1p~Hfd4pはn-アルカン代謝の過程で生成する脂肪族アルデヒドの酸化に関与することが明らかになった。以上の知見は、特に第2項はY. lipolyticaのみならず酵母によるn-アルカンと脂肪酸のの代謝の理解を大きく発展させ、本酵母の物質生産への応用に貢献するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Yarrowia lipolyticaの脂肪族アルデヒド脱水素酵素についての昨年度の成果に新知見を加えるものであり、おおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画は以下の通りである。 1. YAS1、YAS2、YAS3を介するn-アルカンによる制御の解析 SCS2遺伝子破壊株のn-デカン感受性はこの遺伝子のn-アルカン代謝への関与を疑わせるものであり、復帰変異株の変異遺伝子の解析を進めて、Scs2pのn-アルカン代謝制御について知見を得る。 2.n-アルカンの水酸化以降の脂肪酸生成に至る過程の解明 さらにn-デカン水酸化後の酸化過程に関する遺伝子の探索と候補遺伝子の機能を解明する。
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Causes of Carryover |
研究代表者が中部大学に新しい研究室を持つことになり、新しいPCR装置等の扱いに習熟していないためにDNAの増幅実験がうまく行かず、実験が遅れた。そのために特に分担したALK1プロモーターの転写調節因子の解析が不十分となり、研究を延長せざるを得なくなった。なお共同研究者によるn-アルカン酸化物代謝の研究は順調に進んでいる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
SCS2遺伝子破壊株のn-デカン抵抗性変異株のゲノム解析を行い、変異点の同定を行う。繰り越し資金は次世代シーケンサーによるゲノム解析費用として使用する。
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