2013 Fiscal Year Annual Research Report
カンラン岩流域と森林形態が物質フローおよび陸域・沿岸域生物資源に与える影響の解明
Project/Area Number |
24380074
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
笹 賀一郎 北海道大学, 名誉教授 (70125318)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 冬樹 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (20187230)
福澤 加里部 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教 (10456824)
長坂 晶子 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 林業試験場, 主任研究員 (70414266)
秦 寛 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (30250492)
星野 洋一郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (50301875)
東 隆行 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教 (20333651)
仲岡 雅裕 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (90260520)
四ツ倉 典滋 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (60312344)
傳法 隆 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教 (70207512)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 森海連関 / カンラン岩 / 物質フロー / 植物資源 / 遺伝特性 / 生物生産 / 森林影響 |
Research Abstract |
本研究2年度目にあたる2013年度においては、前年度に設定した調査地・観測地を中心に本格的な研究活動がおこなえ、計画のほとんどを実行することができた。 「物質フロー」グループにおいては、カンラン岩地帯では保水能が低く、流出量は平時には少なく・降雨時に急増すること、洪水時に溶存鉄・DOC濃度が急激に高まり、有機物と鉄が結合体として流出している可能性が考えれた。非カンラン岩(堆積岩)地帯河川の洪水時においては、鉄分の流出は少なく、浮遊砂の流出が急増することが確認され、河川流域の地質条件が沿岸海域に与える影響の相違が明らかになった。落葉の河川~沿岸海域の流下・滞留については、41箇所の観測から、単位流量あたりの落葉運搬能は流域面積100km2にモードをもち、流域サイズの増大とともに大きくなることが明らかになった。 「陸域生物資源」グループでは、カンラン岩地帯植物の生育環境把握と遺伝的・生態的特性の解明をすすめた。灌木類については、キイチゴ属についてもアポイ岳の3種と他地域のキイチゴ属とを比較しながら系統解析をすすめており、種ごとにクラスターを形成することによりAFLPマーカーによる種の識別が可能となることが明らかになってきた。草本類については、オオバキスミレ種内分類群の葉緑体DNAから、アポイ岳ハプロタイプから夕張岳のシソバキスミレのハプロタイプが進化したことなどが明らかになった。 「沿岸海域生物資源」グループにおいては、沿岸海域の環境調査を継続しながら、コンブ藻場の分布調査を行った。2013年には、海水温の上昇によりコンブ群落の厚みと密度の低い藻場が広く発生したことや、そのなかでもコンブ場の出現率が高い地区も存在し、主構成体は一年目のミツイシコンブであることなどが確認された。これらの成因や生産性向上に向けての検討のため、次年度以降における実態調査の継続を計画した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の2年度目にあたる2013年度においては、前年度に設定したカンラン岩地帯と非カンラン岩(堆積岩)地帯の陸域および沿岸海域の調査地・観測地を中心に本格的な研究活動を展開することができ、計画のほとんどを実行することができた。 「物質フロー」グループにおいては、カンラン岩および非カンラン岩地帯流域の定点観測地での観測継続とともに、観測地点を増やしながら降雨時や融雪時における集中観測も実施することができた。落葉の河川から沿岸海域にかけての流下・滞留の観測においては、日高管内の河川41箇所における観測が実行でき、流域サイズや森林率などとの関連の解析を行うことができた。また、沿岸海域の落ち葉だまりに関する地域での聞き取りやアンケート調査も実行できた。 「陸域生物資源」グループでは、アポイ岳を中心としたカンラン岩地帯植物の特性や遺伝子多様性・変異状況の把握などについて、計画した種以外の調査もふくめたとりくみができた。灌木類については、計画したハスカップのほかに、キイチゴ類3種についても調査・系統解析を行うことができた。草本類については、オオバキスミレ種内分類群を中心としたハプロタイプの関係解析やヒダカミセバヤなどの集団間における位団的多様性調査なども、ほぼ計画通りに実行することができた。 「沿岸海域生物資源」グループにおいては、カンラン岩地帯と非カンラン岩地帯の沿岸海域においてコンブを中心とした海藻の生育関係の調査を、ほぼ予定通りに実行することができた。2013年度には海水温上昇によるコンブ場の生育不良が発生したことから、実態調査を本年度計画に加えて実施し、次年度以降も調査を継続することにした。また、コンブ藻場における光環境の年変動に関するデータが不十分であったことから、次年度においても透明度や植物プランクトン量などに関するモニタリングを継続することにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、カンラン岩流域と森林形態が陸域および沿岸海域における生物資源におよぼす効果について「山地(森林)-耕地-沿岸海域」空間の関連のなかで明らかにしようとするものであることから、多くの分野の研究者によるプロジェクト研究であるとともに、研究対象地である様似町による協力や共同による調査・観測などもふくめながら実行されている。そのため、効果的な調査や観測などが実施されるためには研究者間や様似町との間における連絡や共通認識などが徹底される必要があり、「事務局」体制を強化しながら、組織的な運営を行うことを心掛けている。 また、研究者間においては、研究グループ間の進捗状況の相互理解や調査・観測内容や役割分担の調整・効果的な合同調査の企画・実行のための打ち合わせなどを目的とした「研究会議」を、年一回の総会的な開催とともに、必要に応じて逐次開催するようにしている。 地元自治体との間においては、「事務局」の主導による各研究グループと様似町との「打ち合わせ会議」を随時設定し、共同による調査・観測の実施やアンケートや聞き取りによる調査への協力を依頼するようにしている。また、最低年一回の「報告会」を開催し、研究成果をフィードバックするとともに地域からの意見や要望をも反映させながら、研究活動を進めることにしている。 2014年度においては、これらの取り組みをもとに2013年度・2014年度に各研究グループから得られた成果の全体的な取りまとめを行い、「山地(森林)-耕地-沿岸海域」関連の解析をすすめる。解析において調査・観測項目やデータなどに補充点などが見いだされた場合には、2014年度の途中からでも調査・観測計画に反映させ、必要データなどを最大確保することを目指すことにしている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じたことについては、河川(渓流)水や海水の化学分析のために予定していた謝金が、スタッフのみの対応で実行可能となったことから、未使用となったことが大きな要因となっている。また、地元(様似町)で予定していた「報告会」等への講師派遣が、町の経費での開催が可能となったことから、予定していた旅費等の経費が不要となった。研究者や地元(様似町)などによるメンバー全員による「打ち合わせ会議」などに、少数ではあるがやむを得ない理由での欠席者があり、このために予定した旅費の一部が未使用となった。 2014年度においては、河川(渓流)水や海水のほか生物関係の採取サンプルの増大が予想されることから、、2013年度に未使用となった謝金分も含めた謝金額を計画し、水分の化学分析や浮遊砂などの懸濁物質の測定・遺伝子解析等に十分に対応できる人員の確保を図ることにしたい。また、2013年度に未使用となった旅費等は2014年度における現地での調査・観測のための旅費や物品の補充などに配分し、より充実した現地調査を実現するための経費とする。
|
Research Products
(11 results)