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2013 Fiscal Year Annual Research Report

Genetic corridorとしての里山機能の解明

Research Project

Project/Area Number 24380075
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

井出 雄二  東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (90213024)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 齊藤 陽子  東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (00302597)
大久保 悟  東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (30334329)
Project Period (FY) 2012-04-01 – 2015-03-31
Keywordsジェネティック / コリドー / 景観遺伝学
Research Abstract

本年度は、主に埼玉県西部の里山林におけるコナラ成木および実生集団の遺伝的多様性と周辺の樹林環境、または集団の履歴との関係について検討した。対象とした集団は18集団で、さらに対照として秩父のコナラ自然林および滋賀県の里山林を用いた。核SSRの解析により、いずれの集団も高い遺伝的多様性を維持し、任意交配集団であることが明らかになった。また、GISを用いて半径500m以内の樹林数や樹林面積と遺伝的多様性との関係はないことが明らかになった。さらに、過去、コナラ林であったところか、アカマツ林であったかでは多様性に違いはなかった。また、集団間分化も著しく低く、集団間の構造も見られなかった。したがって、埼玉県西部のコナラは十分な遺伝子流動の結果成立しており、地域在来の遺伝的多様性を一様に保持していると考えられた。
一方、葉緑体SSRを用いた解析では、全部で7つのハプロタイプが検出され、埼玉県西部では2つ、秩父自然林は1つ、滋賀里山林は5つであった。埼玉県と滋賀県で検出されたハプロタイプは同じものはなかった。埼玉県西部の2つのハプロタイプは遺伝的に非常に近く、また、片方のハプロタイプを持つ個体のほうが圧倒的に多く、このハプロタイプで
秩父自然林は固定されていた。したがって、埼玉県西部のコナラは地域在来の個体で構成されていると考えられた。
これらのことから、埼玉県西部のコナラに関して、里山林は十分な遺伝子流動に寄与し、また、地域在来の遺伝的特性および多様性を一様に保持する空間として機能していると考えられた。
また、本年度は虫媒の樹木種であるコブシの成木のサンプリングおよび遺伝解析を終了した。さらに同じく虫媒樹木のウワミズザクラの成木と実生のサンプリング、マーカー開発を行った。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究は、「空間的に比較的分散して存在する里山が、樹木の遺伝的多様性維持にどのような働きを有するか」を明らかにすることを目的とする。里山が適当な距離と面積を持って分布することによって、林分間の遺伝子流動が一定程度に保たれるとすれば、森林地帯と森林地帯を遺伝的に結合する、”Genetic corridor(遺伝的回廊)”としての機能を果たすことにより、より大きな空間スケールにおける遺伝的多様性維持に大きな意味を持つと考えられる。そのため、まず、1)研究対象地域において里山およびその背後に存在する森林の配置や規模を明らかにし、林分の空間的連続性(隔離)の程度を評価する。ついで、2)そのような景観において、異なる花粉散布および種子散布様式(あわせて繁殖様式と呼ぶ)を有する複数の樹種を対象に、どのように遺伝的多様性が存在するのか、林分相互間においてどのような遺伝子流動が起こっているのかを明らかにする。そして、3)里山の空間配置がそれぞれの繁殖様式に対してどのような意味を持つのかを議論する。また本研究を通じて新たな景観遺伝学の確立を目指すものである。
本年度は、1)の対象地域の基本的なGISデータを取得し、データベースを構築した。また、2)については風媒樹木のコナラおよび虫媒高木のコブシの遺伝解析を終了している。また虫媒高木のウワミズザクラについては、成木、実生のサンプリングおよびDNA抽出まで終えており、核マーカーも開発を行った。虫媒低木のウグイスカグラについては、サンプリングおよび遺伝マーカーの開発の途中である。3)についてはコナラについて考察を行った。したがって、研究機関全体で予定している内容の6割から7割程度は終了したと考えている。

Strategy for Future Research Activity

来年度は最終年度であり、上記の研究目的の中の2)および3)を中心に行う。2)の中で、虫媒高木のコブシについてはアウトグループの追加サンプリングを検討する。また、ウワミズザクラは開発したマーカーをもとに解析を行う。ウグイスカグラは、マーカー開発、追加サンプリングと解析とを行い、繁殖様式、生活形の異なる樹木種4種について遺伝データを取り終える。
ついで、3)の里山の空間配置が、繁殖様式の異なる複数の樹木種の遺伝的多様性に与える影響について、明らかにする。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

この1、2年で、次世代シーケンサーを用いたデータ取得が非常に容易になってきており、使用価格も低下しつつある。そのため本研究でも、マーカー開発に次世代シーケンサーを取り入れたいと考えている。しかし、低下しているとはいえ、次世代シーケンサーのデータ解析には高額の費用と、高性能のパソコン等が必要である。そこで、今年度は通常の方法でのウグイスカグラの遺伝マーカーの開発をせず、次年度次世代シーケンサーを利用して行うこととした。そのため、ウグイスカグラのマーカー開発および分析に必要とした費用が次年度使用額となった。
次世代シーケンサーを用いてウグイスカグラの遺伝情報を取得するための委託費およびそのデータを処理するための高性能パソコンを購入する。

  • Research Products

    (1 results)

All 2014

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] 埼玉県入間地域の里山を構成するコナラの遺伝的多様性2014

    • Author(s)
      齊藤陽子・河原渉・康才明・高橋俊守・大久保悟・井出雄二
    • Organizer
      第125回日本森林学会
    • Place of Presentation
      埼玉県大宮市大宮ソニックシティ
    • Year and Date
      20140327-20140329

URL: 

Published: 2015-05-28  

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