2013 Fiscal Year Annual Research Report
健康増進効果を切り口とした高機能性スギ精油の調製と機能解析
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24380096
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
清水 邦義 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (20346836)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
光永 徹 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (20219679)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Cryptomeria japonica / スギ / 枝葉 / 精油 / 生理応答 / 心理応答 / 揮発成分 / テルペン |
Research Abstract |
スギ(Cryptomeria japonica)は、古くから木材として用いられ、全国各地に人工林が存在するなど、もっとも身近な樹種の一つである。しかし近年では外国産の安価な木材の普及が、スギをはじめとする国産材全体の需要が低下を引き起こし、疲弊した国内の林業は従事者減少・人工林の放置などの深刻な問題を抱えている。そのような状況の中、国産材の従事者の利益につながる付加価値の高い活用法が求められている。そこで本研究では、用材として使用されず、大部分が廃棄されてきたスギの枝葉から嗜好性の高い香り成分を豊富に含む精油が抽出できることに着目し、スギ精油の香りがヒトの心身に及ぼす影響を検証した。本研究では、スギ精油の香りのもつ機能性を解明することで、未利用資源であるスギ枝葉の付加価値の高い有効利用法を提案し、最終的にはスギ自体の需要拡大に寄与することを目的とする。本研究では、スギの枝葉からモノテルペン含量の高い精油を調製した。それらの精油の人の心理生理応答解析評価を行った。提示濃度は、かすかに香る濃度から、被験者が十分検知可能な濃度まで、3段階に変化させた。心理計測は、POMSを用いた主観評価を、また、生理計測に関しては、脳波、心電図および唾液のアミラーゼ活性を計測した。視覚刺激としては、オドボール課題を採用した。スギ精油の濃度変化と、それらの生理・心理応答変化について検討したところ、ほとんど主観的に認識されない低濃度においても大きな生理変化(β波の低下)が観察され、濃度によって挙動が大きく変化することが示された。このことは、スギ精油の人の生理・心理応答に着目した利活用法において濃度の重要性を示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトの最大の目的は、被験者実験によるスギ精油の生理・心理応答の数値化である。25年度は、特に、濃度について検討することができ、特に、低濃度において、大きな生理的変化を誘導することを見いだした。このことは、同じスギ精油であっても、濃度を変化させることによって、用途を拡大できることを示しており、基礎的応用的なブレークスルーが期待される。本知見を元に、26年度では、別の精油調製法を検討し、セスキテルペンが多いスギ精油の機能性について検討する。3年間の2年目の成果として、本知見は、3年目の研究につながる重要な発見を含んでおり、そのために、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度までの成果によりスギ枝葉よりモノテルペン高含有精油の調製に成功し、それらをいくつかの濃度を変化させながら、人の生理・心理応答を解析した。その結果、濃度のファクターが、非常に重要であり、むしろ低濃度の場合の方が、生理的変化が大きくなることも示された。26年度においても、25年度までに実施した被験者実験のデータ解析、考察を継続的に実施する。それに加えて、25年度までに検討したモノテルペン高含有精油の結果と比較するために、26年度においては、セスキテルペン高含有の精油を用いて、被験者実験を行う。モノテルペン高含有精油と、セスキテルペン高含有精油とで同じ被験者実験を、濃度を変化させて行うことにより、人の生理・心理応答のエビデンスを元とした、スギ精油の高度利活用法の基礎的応用的ブレークスルーを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
被験者実験による精油揮発成分の生理・心理応答解析評価が順調に進み、想定していた前検討による事前被験者実験が不要となり、そのために、被験者実験に供するための経費が余剰分として、次年度使用額に上乗せされた。さらに、脳波測定のための電極は、消耗品として計上していたが、交換の必要が生じなかったり、また、精油の収率が想定以上であった。以上が理由である。 次年度においては、モノテルペン高含有のスギ枝葉由来精油の被験者実験のデータ解析ならびに、比較のためにセスキテルペン高含有のスギ材部由来精油の被験者実験のデータ解析を行う。それらの特徴の異なる精油を用いた被験者実験を行う。特に、それぞれの試験においては、脳波、心電図、唾液のアミラーゼ活性等の生理応答を検討するとともに、POMSを用いた主観評価も行う。これらの被験者謝金ならびに実験補助員の人件費として、効率的に使用する予定である。
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Research Products
(9 results)
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[Presentation] スギ精油の香りに対するヒトの生理心理応答調査2014
Author(s)
(九大院生資環)◯山邊結子,(九大院農)松本清,山本篤,中川敏法, (九大院システム情報)光藤崇子,(宮崎県木材利用センター)須原弘登,(福岡女子大)石川洋哉,(近畿大)大貫宏一郎,(九大基幹院)岡本剛,(九大院農)清水邦義
Organizer
日本木材学会
Place of Presentation
愛媛大学
Year and Date
20140313-20140315
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[Presentation] Electrophysiological Characterization of Wooden Environment during Sleep2014
Author(s)
K. Permana, T. Okamoto, Y. Yamada, J. Nagano, S. Matsumoto, A. Yamamoto, Y. Yamabe, T. Nakagawa, K. Terui, K. Fujita, A. Kawasaki, N. Sato, N. Fujimoto, K. Shimizu, T. Mitsudo, T. Nakashima, H. Ishikawa, K. Ohnuki, Y. Watanabe, H. Shimazu, S. Yasunari
Organizer
日本木材学会
Place of Presentation
愛媛大学
Year and Date
20140313-20140315
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[Presentation] Restorative effect of wooden materials on electrophysiological responses in humans2013
Author(s)
S. Matsumoto*, T. Okamoto*, A. Yamamoto*, K. Ohnuki, T. Mitsudo, H. Ishikawa, R. Fukuda, K. Fujita, T. Nakashima, Y. Yamada, J. Nagano, S. Yasunari, Y. Watanabe, N. Fujimoto, K. Shimizu (Poster)
Organizer
Society for Neuroscience 2013 (43rd Annual Meeting)
Place of Presentation
Convention Center, San Diego, USA
Year and Date
20131109-20131113
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