2014 Fiscal Year Annual Research Report
雑種ゲノムの発生工学的解析による育種利用に関する研究
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24380099
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山羽 悦郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (60191376)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒井 克俊 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 教授 (00137902)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 始原生殖細胞 / 生殖系列キメラ / 生殖細胞質 / 雑種 / 魚類 / ラスボラ亜科 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請では、魚類における新品種の誘導の新しい手法として、コイ目魚類における致死性雑種より配偶子の幹細胞(始原生殖細胞:PGCs)を不妊化した宿主の生殖腺内で培養し、配偶子の誘導の可能性を探る研究を行っている。平成25年度までに、ラスボラ亜科の魚種間での交雑を行い、いずれも致死性ではあるがPGCsが分化することを明らかにしている。本年度は、成熟卵を容易に得られるキンギョを母系とし、カワバタモロコとパールダニオを父系親魚とする交雑の特性を明らかにした。 1. キンギョ♀×カワバタモロコ♂の交雑胚は、胞胚期まではキンギョ対照胚と同等に発生したが、その多くはエピボリー終了前後に死亡した。生残個体の倍数性は、ほとんどの奇形個体が両親の倍数性の中間である雑種二倍体の倍数性を示し、正常に近い個体は、キンギョ2・カワバタモロコ1のゲノム構成を有すると考えられる異質三倍体が確認された。本交雑によりゲノム構成の異なる複数の致死性の雑種が誘導されたと考えられた。 2. GFP-nos1 3’UTR mRNAのキンギョ♀×カワバタモロコ♂受精卵への顕微注入により、胚体形成期以降GFP蛍光によりPGCの存在が確認された。交雑胚の胞胚期の割球をキンギョ胞胚へ移植しキメラ胚を誘導したところ、キンギョ×カワバタモロコ胚に由来するPGCがキメラ胚の生殖隆起へ移動した。しかしながら、生殖隆起へ移動したPGCは受精後一週間で消滅した。本交雑胚に由来するPGCは生殖隆起へ移動する能力を持つものの、細胞自体が致死あるいは宿主内で排除される可能性が高いと考えられた。 3. キンギョ♀×パールダニオ♂の交雑胚は、エピボリー終了時までに90%以上が死亡した。一部は孵化したものの、受精後15日までに死亡し、致死性であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者の所属する七飯淡水実験所は、平成25年度から新棟建築のために屋外水槽の移動や屋内水槽の整理等が行われて来た。新棟の建築は平成25年度中に行われる予定であったが、アベノミクスによる建設費上昇のため、落札が半年遅れ、平成26年度から始まり半年間に及んだ、その間、親魚の使用等に制限があり、実験が予想通り進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで行って来たラスボラ亜科間の雑種はほとんどが致死であるものの、孵化までは生き残り、それらの胚には始原生殖細胞(PGC)が形成されることが明らかになって来た。交雑した雌親種を宿主として雑種のPGCを移植した場合、現在まで行って来たゼブラフィッシュ♀×キンギョ♂、キンギョ♀×カワバタモロコ♂どちらとも、生殖腺原基まで移動するものの、その後の発生過程で消失することが明らかとなっている。 このような移植PGCの宿主内での消失が致死性雑種において普遍的なものであるかを明らかにするため、さらに他の雑種においてもPGCの移植を継続して行う。特に、キンギョ、ゼブラフィッシュ、カワバタモロコの3種において相互のPGC移植を行い、雑種ゲノムとそれぞれの種の細胞質との関係を明らかにする。 また、ヒナモロコを♂親にしたアカヒレ×ヒナモロコ、パールダニオ×ヒナモロコにおいてわずかながら生き残った個体が得られている。これらの個体は、ゲノム量の測定から雌性発生、あるいは複二倍体と考えられた。同種の精子による受精により、ゲノム構成の変異が生まれることが予想される。そこで、ヒナモロコの精子を用いた雑種を誘導し、交雑個体のゲノム変異を明らかにする。
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Causes of Carryover |
申請者の所属する七飯淡水実験所は平成25年度から新棟建築のために屋外水槽の移動や屋内水槽の整理等が行われて来た。新棟の建築は平成25年度中に行われる予定であったが、工事が遅れ完成が平成26年度10月となった。その間、親魚の使用等に制限があり、実験が予定通り進まなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額は少ないが、親魚の準備等は新棟竣工後進んだので、この材料を用いて実験を進行させる。残額は今後の研究に必要な物品の購入、親魚飼育のための実験補助の謝金、学会誌発表等の経費に用いる。
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