2012 Fiscal Year Annual Research Report
UV照射等の卵核遺伝的不活性化を用いない新規雄性発生誘起法の開発と応用
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24380100
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
荒井 克俊 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 教授 (00137902)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山羽 悦郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (60191376)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 雄性発生二倍体 / 倍加半数体 / 四倍体 / 染色体操作 / マイクロサテライト / ドジョウ / 卵核 / 受精 |
Research Abstract |
ドジョウを用いた実験では、卵に対してUV照射をすることなしに、劣性形質のヒドジョウ遺伝子をホモ接合としてもつ雄の精子を受精した後約10秒以内に、3±0.5℃30分間の低温処理を行うことにより、人為雄性発生を人為的に誘起することができた。雄性発生の確認は、父系劣性形質(オレンジ体色)の発現、フローサイトメトリーによる半数性DNA量、および、マイクロサテライトDNAマーカー型によって行った。次に、これら雄性発生半数体の第一卵割阻止を受精後55-70分(胚は約20℃で培養)からの高温処理(42±0.5℃、2分間)により試みたところ、受精後65分からの処理群で、使用卵に対する雄性発生二倍体(倍加半数体)の生産率は最高の約11%となった。ドジョウのゲノム(全連鎖群)をカバーする28座のマイクロサテライトを解析したところ、これらの座では父系アレルのみが出現し、しかも、全てホモ接合であった。以上の結果は、低温処理による雄性発生開始と高温処理による卵割阻止型の染色体倍加により、完全ホモ接合体の雄性発生倍加半数体を誘起しうることを示した。また、卵割阻止を行わずに、人為的に誘起したネオ四倍体(野生型正常二倍体雌×自然四倍体雄の交配後、第二極体放出阻止)の産する二倍性精子で受精後、直ちに上記条件での低温処理を行ったところ、使用全卵の約12%が雄性発生二倍体として生じた。これらの子孫のマイクロサテライトDNAマーカー型は父系由来アレルのみにより構成されていた。以上の結果は、ドジョウにおいては、受精卵の低温処理により雄性発生誘起が可能であり、この技法に従来の第一卵割阻止を加えることにより倍加半数体を、また、二倍性精子の受精で生存性の雄性発生二倍体を作出できることを示した。雄性発生を起こすための温度処理最適条件を、現在、ゼブラフィッシュにおいて検討中であり、基本的には温度処理により卵核消失が生じ、雄性発生が誘起されることは確認済みである。サケ科でも検討に着手し、受精直後の温度処理が子孫の倍数性に大きく影響することは判明したが、雄性発生誘起の証明までには至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はドジョウに集中して、確実に雄性発生が誘起できること、また、その最適条件を確定できた。また、卵割阻止及び二倍体精子を用いた雄性発生二倍体作出にも成功した。また、ゼブラフィッシュ、サケ科における本手法の有用性の検討にも着手できた。以上のことから、ほぼ計画通りに進行しており、達成度(2)と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も当初計画に従い、ゼブラフィッシュ、キンギョ、サケ科魚類において、温度処理による雄性発生誘起条件を明らかにするとともに、凍結保存精子による雄性発生にも取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の消耗品購入に充てる。
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