2013 Fiscal Year Annual Research Report
UV照射等の卵核遺伝的不活性化を用いない新規雄性発生誘起法の開発と応用
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24380100
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
荒井 克俊 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 教授 (00137902)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山羽 悦郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (60191376)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ゼブラフィッシュ / 倍加半数体 / 純系 / クローン / マイクロサテライト / AFLP / 染色体操作 / 受精 |
Research Abstract |
前年度のドジョウにおける受精直後卵の低温処理による完全ホモ接合雄性発生倍加半数体および四倍体の二倍体精子による雄性発生二倍体の作出の成功に続き、本年度はドジョウ以外の魚種として、モデル実験魚として広く利用されるゼブラフィッシュを材料として、低温処理による雄性発生誘起の有効性を検討した。 ゼブラフィッシュにおいて1~10℃の低温で受精直後卵を処理した場合、24時間後生存率と半数体出現率から雄性発生半数体誘起率をみると、7℃処理が最も高かった。受精卵の切片から卵核の動態を細胞学的組織学的に観察したところ、ドジョウの場合と同様に、好適な低温処理により卵核と第二極体核の両者が卵外に放出された場合は雄性発生半数体が、中途半端な放出が起きた場合は異数体が、そして、第二極体放出が阻害された場合は三倍体が生じることが判明し、ゼブラフィッシュにおいてもドジョウと同様のメカニズムが働いていることが判明した。さらに、20~60分間の間で好適処理持続時間を検討したところ、雄性発生半数体の誘起率に大きな差はなかった。 そこで、7℃で30分間の低温処理により雄性発生を誘起後に、41.4℃、2分間の高温処理により、染色体倍加を試みた結果、使用卵の約1%が雄性発生倍加半数体として発生した。ゼブラフィッシュの25連鎖群をカバーする30マイクロサテライトDNAマーカー座を分析したところ、全座がホモ接合であることから、これら倍加半数体は完全ホモ接合であることが確認できた。 作出したゼブラフィッシュ雄性発生倍加半数体を成熟まで育成し、得た精子を用いて次世代で再び低温処理と高温処理を組み合わせて、雄性発生倍加半数体を作出し、AFLP法で分析したところ、これらは遺伝的に同一であることが判明した。すなわち、低温発生雄性発生法によるクローン家系の作出に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドジョウにおける生存性の雄性発生二倍体(倍加半数体)の作出成功とその論文発表に続き、実験動物として広く利用されるゼブラフィッシュにおいて、受精直後卵の低温処理により、ドジョウと同じメカニズムにより雄性発生半数体が生じること、さらに、高温処理による染色体倍加法と組み合わせることにより雄性発生倍加半数体を作出することに成功した。そして、その精子を用いた次世代の雄性発生倍加半数体の作出により、遺伝的に同一のクローン家系作出まで達成できた。以上のように、ドジョウ以外の魚種において、低温処理による雄性発生二倍体誘起まで実証したことから、ほぼ計画通り研究は進捗しており、達成度(2)と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に従い、重要産業種を多く含むコイ科のキンギョ・フナ、サケ科のサクラマス等の魚類において温度処理による雄性発生誘起条件を明らかにするとともに、二倍体精子、凍結保存精子を用いた雄性発生誘起にも取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費特に薬品類の節約により生じた残額 新年度からの飼育魚類の飼料代(物品費)に供する
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