2012 Fiscal Year Annual Research Report
餌料用動物プランクトンの行動特性:環境応答メカニズムの解明と仔魚飼育技術への展開
Project/Area Number |
24380108
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
萩原 篤志 長崎大学, 大学院・水産・環境科学総合研究科, 教授 (50208419)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 水産学 / 餌料生物 / 仔魚飼育 / 行動 / 環境応答 / 光応答 / 付着行動 |
Research Abstract |
次の3点について研究を行った。 (1)餌料生物種および仔魚の視感度特性:シオミズツボワムシ、チグリオプス、アルテミアの餌料用動物プランクトンの眼点は、青色光(470μm)と緑色光(525μm)をよく吸収したが、赤色光(660μm)をほとんど吸収しないことがわかった。一方、ミジンコの複眼と仔魚(マングローブキリフィッシュ)はどの波長光に対しても高い吸収率を示した。 (2)光照射による行動パタン(走光性)の変化と生活史パラメータ:上記の動物種は、すべて正の走光性を示し、特にワムシとチグリオプスは青色光に対して強い走光性を示した。ワムシにパン酵母を給餌したとき、眼点色素の吸光度(A)は、0.15(測定波長460~525nm)で、微細藻のナンノクロロプシスを給餌したとき(A=1.02~1.06)に比べて小さかった。眼点色素の分布域もナンノ給餌区(82.9μm^2)に比べてパン酵母給餌区(14.7μm^2)では小さくなった。餌料条件の違いはワムシの走光性にも影響を与え、赤色光や強い青色光(15.0W/m^2)の照射時には餌料間で違いは見られなかったが、弱い青色照射下(0.1, 0.5W/m^2)では、正の走光性を示すワムシの割合が、ナンノ給餌で88~90%だったのに対し、パン酵母給餌では47~56%にとどまった。また、両給餌区共にワムシ増殖率には放射照度間、光波長間で違いがなかった。 (3)餌料生物の行動パタンの変化と生活史パラメータ:ワムシは、餌料環境が良好なときに付着して、摂餌を活発に行い、環境の悪化にともなって遊泳行動を活発に示した。また、母ワムシの加齢にともない、産卵終了後の付着時間が減少した。低光量下(0.5W/m^2)では付着率が上昇するが、強光下では遊泳個体が増加し、ストレス下からの逃避手段として遊泳行動が機能していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
餌料生物3種と仔魚の視感度特性と光走性を明らかにでき、ワムシの行動パタンについても当初予定した餌料のみならず、光に対する応答についても知見を得ることができた。24年度に計画していたミジンコとカイアシ類の飛び跳ね行動については次年度に検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
計画調書の記載にしたがって研究を継続する。24年度の研究を通じて、光走性のみならず、実験水槽の器壁や重力に対する走性であると推測される事例が見つかり、これらについて検討を新たに開始したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
走性の発現に対する水中溶存酸素の影響を検討するため、マイクロ酸素濃度計の購入に使用する計画である。
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Research Products
(12 results)