2013 Fiscal Year Annual Research Report
餌料用動物プランクトンの行動特性:環境応答メカニズムの解明と仔魚飼育技術への展開
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24380108
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
萩原 篤志 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (50208419)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 水産学 / 餌料生物 / 仔魚飼育 / 行動 / 環境応答 / 付着 / 生活史 |
Research Abstract |
汽水産のワムシ(1)、カイアシ類(2,3)、ミジンコ(4)を用い、次の結果を得た。 (1)ワムシが生涯に付着と遊泳を繰り返す回数(平均±標準偏差)は1.3±2.3回/時、合計付着時間は57.6±11.9分/時で、加齢に伴う付着時間、付着回数の変化はなかった。 (2)Tigriopus japonicusを高密度・暗黒・飢餓条件におくと,容器内の上部で遊泳する個体が最も多く(16.8 %),他の条件下では遊泳個体の割合は3.0-13.4 %だった。0.5 W/m2の光照射では,青色光に対してのみ,本種は正の走光性を示した。2.0 W/m2では正の走光性を示したが,3.5 W/m2では負の走光性を示した。また,2.0, 3.5 W/m2の青色光を容器の底面から照射することによって、本種の正の重力走性よりも負の走光性が上回り,他の波長と比較して浮遊個体の割合が有意に高くなった(44.6-47.4 %)。三次元培養システムを用いて微小重力下で培養しても、浮遊する個体が増えることは無かった。 (3)Acartia tonsaとT. japonicusの成体1個体とノープリウス幼生1, 5, 10個体を48時間共存させ,給餌および無給餌条件下で共食いの誘発状況を調べた。A. tonsaでは給餌,無給餌の両条件下で,成体による共食いと判断されるノープリウス幼生の減耗がみられ,特に無給餌下での幼生の生残(12-50%)は給餌下(56-80%)より低くなった。T. japonicusでは,共食いと判断される幼生の減少はみられなかった。 (4)光の強さと波長に関わらず、ミジンコは正の光走性を示し、眼点または複眼の視感度特性と一致した。重力については、ワムシは正の走性、ミジンコは負の走性を示し、このとき上部に光照射しても重力走性による分布を維持した。一方、下部から光照射すると負の重力走性に逆らって、下層へ移動するミジンコが出現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同種の複数個体の共存下で、各動物プランクトン種の生活史と行動パラメータ(付着、匍匐、光走性、共食い)を明らかにし、当初の目的を達成している。特に前年度の結果にもとづき、新たに重力に対する走性を検討した結果、種特異的な重力走性を有することを明らかにした。推測された仔魚期の海産魚と共存させた実験も実施し、飼育結果を解析中である。また、動物プランクトンの光走性を司る眼点色素はロドプシンであると推定し、ワムシの機能性遺伝子解析によるオプシン遺伝子の存在について検討を実施している。以上より、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
計画調書の記載にしたがって、研究を継続する。前年度まで検討した飢餓に対する応答のみならず、短時間の水温や塩分ストレスに対する生活史と行動の変化についても新たに検討を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度をまたぐ長期にわたる実験を実施中のため、今年度研究費の一部を次年度に繰り越すこととした。 長期飼育実験に必要な消耗品の購入に充てる。
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Research Products
(15 results)