2012 Fiscal Year Annual Research Report
土壌中の封入空気が湿潤気候下の地表面限界領域における物質移動に与える影響
Project/Area Number |
24380130
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西村 拓 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (40237730)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井本 博美 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 技術職員 (40419255)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 封入不飽和 / 不飽和透水係数 / 溶質移動 / 溶質分散係数 / 分散長 |
Research Abstract |
まず、100cc定積の容器を用いて、火山灰土、沖積土という典型的な土壌構造を持つ二つの土を試料にして封入空気量の制御について検討を行った。減圧チャンバーを用いた脱気飽和、吸引法装置を用いた排水の繰り返しにおいて、吸引圧、排水時間などを試行錯誤して組み合わせた結果、試料の空気侵入値を超えた吸引圧をかけて排水量を指標にすることで既往の研究同様、完全飽和(封入空気量=0)から最大で10%vol.程度までの封入空気量を土中に生じさせる手順を確定した。これは、湿原や水田においてわずかな量のメタン気泡が発生しただけで、原位置の水の浸透速度さらには溶存性物質の移動速度が低下することを示唆している。また、メタン気泡の発生によって水の浸透速度が低下すると酸素の供給が抑制され、土壌中はさらに還元状態に傾く。その結果、メタン生成が促進されるという、メタン生成のメカニズムが推察される。 火山灰土、沖積土共にわずかな封入空気量で透水係数の顕著な低下を示し、5%vol.程度の気泡を土中に封入した時には透水係数が完全飽和時の10分の1程度まで低下した。また、それ以上封入空気量を増してもさらなる透水係数の低下は見られなかった。 100cc定積容器で確定した手順を用いて、溶質移動実験が可能な10cm以上の長さの円筒土壌についても封入空気を与え、溶質移動実験を行った。その結果、完全飽和土で0.68~0.88cmであった分散長が封入空気量5.7%の時に1.03cm程度まで増大した。空気封入時の透水係数の大きな低下に比べて分散長の変化は小さい。この点については、次年度以降、さらに長い試料円筒をもちいた実験を行って検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
土性の異なる土壌については、封入空気を生じるプロトコールを確立し、封入空気による透水性や溶質分散性(分散長)の変化を得ることができた。しかし、ThermoTDRを用いた水分量(気相率)-固相率同時モニタリングについては、期待した精度が得られなかった。この点が、予定よりも若干遅れたという評価の理由である。次年度にThermoTDRを用いた水分量(気相率)-固相率同時モニタリングの精度向上の工夫を加え、円筒カラム実験を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ThermoTDRを用いた水分量(気相率)-固相率同時モニタリングの精度改善のために、新たに校正式を作成すると同時に試料サイズを若干大きくする等の工夫を加え、円筒カラム実験を行う予定である。それ以外については、比較的順調であるため、2年目は、溶質移動、コロイド吸着物質の移動と封入空気の関連について実験データを蓄積していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
センサーの精度を改善するため、長さだけではなく、径についても若干のスケールアップをすることが望ましいと考えられた。そこで、次年度使用額を、H24年度に使用したものよりも大きな試料円筒の作成する経費として支出する予定である。
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Research Products
(4 results)