2014 Fiscal Year Annual Research Report
太陽光利用型植物工場における「環境制御-作物生育」統合モデルの開発
Project/Area Number |
24380136
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
後藤 英司 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (00186884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
彦坂 晶子 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (50345188)
石神 靖弘 千葉大学, 園芸学研究科, 助教 (50361415)
奥島 里美 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究所, 上席研究員 (10373226)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 施設園芸 / 植物工場 / 温室 / シミュレーション / 生育モデル / 環境制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では一般建築分野での使用を想定して開発されたシミュレーションソフト「TRNSYS」で温室内環境シミュレーションモデルを開発した。このソフトは熱収支や湿り空気の計算はモジュール化されており、複雑なモデルを比較的容易に記述することが可能である。まずTRNSYS3Dモデリングにより温室モデルを作成した。温室内空気環境の分布を考慮するために、空間的には、温室上部、温室下部および前室の3空間で構成した。温室環境モデルは、TRNSYS標準ライブラリに含まれる複数のモジュールを一部改変して構成した。このモデルは、床面および各壁面の日射の受光、大気・床面および各壁面間の長波放射交換、各壁面における熱貫流および床面における対流熱伝達、土壌の熱伝達、換気および空気流動を記述した。設備機器として、換気窓、遮光カーテン、保温カーテン、細霧冷房、エアコン暖房、エアコン冷房を組み込み、また作物群落の蒸散を蒸発源として記述した。シミュレーションは、世界各地の標準気象データベースおよび国内のAMeDASデータベースから任意の地点を選び、365日、1時間単位の全天日射束、気温、相対湿度、風向および風速を与えて、環境制御下における温室内の気温、相対湿度、壁面温度等を計算する。作物生育モデルにはトマトを選び、Vanthoor et al.(2011)を基にして群落光合成、炭水化物分配、成長呼吸、維持呼吸、摘葉、器官発生および果実発育を記述した。作物生育モデルは温室環境モデルと統合するためにFortran 90で記述し、TRNSYSの新しいモジュールとして組み込み、「環境制御-作物生育」統合モデルに仕上げた。このモデルで様々な地域においてトマトを周年生産するための環境制御をシミュレートして、水資源、冷暖房エネルギーの推定およびトマトの収量を推定できることを確認した、以上から、新しい概念としての施設園芸における「環境制御-作物生育」結合モデルの有効性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
温室で植物栽培を行って生育データを取得する栽培系の実験と、コンピュータにおいて数理モデルを用いてモデルを構築する非実験系のアプローチを組み合わせ、かつ、環境モデルと生育モデルを結合したモデルを作り上げるという難しさの多い課題を設定したが、おおむね当初の計画通りに実施できた。これは、実験とモデル化の両方にバランスよく取り組めたおかげである。
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Strategy for Future Research Activity |
信頼できる海外の気象データベースをさらに集めて、海外の施設園芸の拠点地域のシミュレーションを行うように進める。また、トマト以外の施設園芸農作物の生育モデルを順次組み込んでいくことが望ましい。
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Causes of Carryover |
26年度は、1年間かけて、複数の環境制御方式に関する実証データと生育モデル用の植物データの取得を行う計画であった。しかし、夏季の高温時期が短くて高温期の良質なデータをあまり取得することができなかったこと、また、試験温室エリアに植物病害が発生してしまい良質な生育データを得られなかったため、今年度は限定した季節での検証を実施したため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、生育モデルのデータ取得と統合モデルの最終的な確立を次年度に行うこととし、次年度使用額をその経費に充てることとしたい。
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