2012 Fiscal Year Annual Research Report
家禽の輸卵管で精子の運動を制御する分子スイッチの探索と動物精子の液状保存への応用
Project/Area Number |
24380153
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
笹浪 知宏 静岡大学, 農学部, 准教授 (80322139)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 受精 / 精子 / 輸卵管 / 精子貯蔵管 / ウズラ / 分子スイッチ |
Research Abstract |
鳥類の雌性生殖器官である卵管には、交尾後、精子を長期間貯蔵し、生存させるための精子貯蔵管(Sperm Storage Tubules ; SST)が備わっており、SSTの抽出物を射出精子とインビトロでインキュベートすると、精子は鞭毛の振幅を減少させ、20時間以上も生存し運動を継続することを発見した。本研究では、鳥類特有の貯精現象の分子機構を解明するとともに、この生理活性物質が種を超えて効果を有することから、動物の精子に共通した運動制御機構の原理を発見・解明することを目標としている。さらに、この原理を応用し、各種動物精子をインビトロで長期間液状保存する新規技術の開発を目指す。 抽出物中に含まれる精子の運動調節因子を同定するため、ヘパリン、アビジンまたはニッケルレジンに抽出物を吸収させ、その上澄みの活性を検定した。その結果、運動調節活性はニッケルレジンに吸着されることが判明した。ニッケルレジンに吸着したタンパク質を網羅的に LC-MSIMS解析にて同定し、同定された一部のタンパクに対する特異的抗体を作製した。抗体の膣内への投与実験の結果から、heat shock protein 70 (HSP70)に対する抗体が受精を顕著に阻害することが判明した。また、抽出物を限外濾過によって分画したところ、分子量10kDa以下の画分に精子の運動を強力に抑制する低分子成分の存在を確認した。この低分子画分の添加により、タンパクキナーゼAの基質タンパクが脱リン酸化されていることが判明し、この基質タンパクはLC-MS/MS解析により鞭毛のダイニン軽鎖1タンパクであることが判明した。この成分の同定を目指し、シリカゲルクロマトグラフィーによる単離とNMRによる構造決定実験を遂行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
精子の運動調節因子のひとつとして、HSP70を同定し、その抗体により受精が抑制されることをすでに明らかにしている。また、研究を遂行する過程であらたに精子の運動を抑制する低分子成分の存在を確認し、構造決定の為の研究を遂行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で明らかになったタンパク性の運動調節因子と低分子成分の組み合わせにより、さらなる精子のインビトロでの維持効果の向上を目指すとともに、精子側での作動機序を明らかにして行きたい。
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Research Products
(12 results)