2012 Fiscal Year Annual Research Report
自己免疫疾患と不妊症に関する分子解剖学-発症と精子発生チェックポイントとの関連-
Project/Area Number |
24380156
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
昆 泰寛 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 教授 (10178402)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 自己免疫疾患 / 不妊症 / MRL/MpJ / コンジェニックマウス / 腎臓 / 糸球体腎炎 / 精巣内卵細胞 / 石灰沈着 |
Research Abstract |
精子発生チェックポイントは細胞品質管理機構である。MRLマウスは自己免疫疾患および精子減少症モデルとして知られる。本研究の目的は、精子発生チェックポイントと自己免疫疾患発症の関連について明らかにすることである。今年度は、候補アリルをMRL型に維持したまま、バックグラウンドをC57BL/6に置換したコンジェニックマウスを作出した。すなわち、MRLマウス第1および第2染色体上にある精母細胞アポトーシスを表現型とする遺伝子座を持つコンジェニックマウス(B6.MRLc1、B6.MRLc2)、および精巣内卵細胞を表現型とする遺伝子座を持つコンソミックマウス(B6.MRLcY)を作出し、それらの自己免疫疾患発症を観察した。 その結果、B6.MRLc1コンジェニックマウスで膜性増殖性糸球体腎炎の像を呈し、メサンギウム増殖、糸球体基底膜の肥厚・免疫複合体沈着、足細胞傷害、糸球体スリット膜関連分子の発現低下ならびに炎症メディエーターの発現増強等を示したことから、自己免疫性糸球体腎炎の発症が確認された。さらに本マウスの膵臓でCD3陽性T細胞およびB220陽性B細胞の浸潤が有意に高く、一部に腺房細胞の破壊像が観察された。しかし、本マウスは高い血中抗DNA抗体価を示すが、血中リパーゼおよびアミラーゼの活性とは十分な相関が得られなかった。 MRLマウス同様に、B6.MRLcYマウスは精巣内卵細胞を有することから生殖細胞分化に異常のあることが確認された。さらに、精巣内卵細胞の出現を決める因子は9番染色体上にもあることが推測された。高温曝露によって実験的不妊症を誘発したMRLおよびB6の精巣では、重度の精細管腔内石灰沈着が出現したが、B6.MRLc1の精巣では石灰沈着の発生が抑制されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自己免疫疾患の発症と不妊症の発症とが同一系統のコンジェニックマウスで確認されたことは、今年度の目的を十分に達成できたと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
各血液精巣関門因子を蛋白レベルで検出すると共に、電子顕微鏡による形態観察を行う。引き続きコンジェニックマウス作出および解析を行う。メチル化酵素に対する抗体およびプローブを用いて生殖細胞の分化過程を解析し、自己免疫疾患との関連性を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新たに発見された高温曝露精巣の石灰沈着現象がB.MRLc1マウスでは出現しなかった。これをマイクロアレイ等の分子生物学的に解析するための予算を翌年度予算と併せて使用する計画である。また、精巣内卵細胞出現を決定する9番染色体コンジェニックマウスの作出を、資金を要するスピードコンジェニック法で実施する計画である。
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Research Products
(16 results)