2012 Fiscal Year Annual Research Report
脂質ラジカルの異なる階層間での情報統合と疾患モデルへの適用
Project/Area Number |
24390011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山田 健一 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (60346806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小堀 康博 静岡大学, 理学部, 准教授 (00282038)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脂質ラジカル / 蛍光 / 酸化ストレス / ニトロキシド / 脂質過酸化 / 活性酸素 / ESR / MRI |
Research Abstract |
過酸化脂質は、高血圧や糖尿病など多くの疾患で生成することが報告されている。すなわち、この反応基点となる脂質ラジカル中間体を検出・抑制できれば、酸化ストレス疾患発症のメカニズム解明やその治療薬の開発に大いに貢献できる。そこで、本年度は、環境応答性蛍光団を利用した蛍光スピン化合物の開発とともに、蛍光ニトロキシドの論理的なプローブ設計を目指し、蛍光原子団に対する消光作用の詳細な解明を行った。 様々な蛍光原子団を有するニトロキシド誘導体を合成し、脂質ラジカルと結合すると蛍光がONになる化合物の開発に成功した。さらに一連の化合物の光物性を測定したとろ、蛍光ニトロキシドは結合させた蛍光原子団によって消光作用の度合いが大きく変化することがわかった。そこで、論理的な蛍光ニトロキシドの開発に向けこれら消光メカニズムを解析するために、蛍光ニトロキシドの酸化還元電位を測定した。その結果、蛍光原子団のHOMO-LUMO準位間にニトロキシドに由来する分子軌道が存在し、熱力学的にも電子移動は起こり得ることが分かった。さらに得られた結果をもとにRehm-Wellerの式を用いて電子移動におけるギブズエネルギー変化量を算出したところ、ニトロキシドの消光作用との間によい相関が得られた。 以上の結果より、脂質ラジカルと鋭敏に反応する蛍光ニトロキシドの合成に成功するとともに、蛍光団とニトロキシド間による消光作用は、電子移動によっても引き起こされることがわかった。次年度以降これら化合物を培養細胞・疾患動物モデルに適用することで、脂質ラジカルと疾患の成因との関係を明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、蛍光ニトロキシドの消光メカニズム解明に大きく前進し、化合物の論理的な設計に向けた成果を得たことから、当該年度の目標を達成している。さらに、予備検討の結果、ニトロキシドをMRI用造影剤として使用できることも見出しており、本研究の全体目標に向け順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、脂質ラジカルを検出する蛍光ニトロキシド化合物としての合成・評価を進めるとともに、もうひとつの目標であるMRI用造影剤としての可能性を検討する。すでに、予備検討の結果、造影剤としての機能を有することを見出しており、研究を遂行するにあたり現時点で目標を左右するような大きな問題点はなく、順調に推移するも〓と予想している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、蛍光ニトロキシド化合物の合成とともに、磁気共鳴用造影剤としての実験を行う。さらに疾患モデル動物への適用も予定している。そこで、主に物品費(有機化学実験用試薬、生化学実験用試薬、実験動物)として研究費を使用する予定である。また、国内外学会で成果発表のため、旅費を計上する。
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