2013 Fiscal Year Annual Research Report
原始IL-5産生細胞による免疫と炎症の制御に関する研究
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24390119
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
高津 聖志 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 客員教授 (10107055)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長井 良憲 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 客員准教授 (30431761)
生谷 尚士 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 客員講師 (40513718)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | サイトカイン / 自然免疫 / 粘膜免疫 / 免疫監視・腫瘍免疫 |
Research Abstract |
平成 25 年度は腸管免疫における原始 IL-5 産生細胞の動態・機能解析を中心に研究を行った。 (1)腸管におけるIL-5産生細胞とその制御に関する研究:小腸と大腸では原始 IL-5 産生細胞の増殖に重要である IL-25 や IL-33 に対する応答性が異なっており、小腸の原始 IL-5 産生細胞は IL-25 により高い反応性を示したのに対し、大腸の原始 IL-5 産生細胞は IL-33 に強く応答した。これは IL-33 レセプターである ST2 の発現量が小腸の原始 IL-5 産生細胞で低下しているためと考えられた。IL-5産生が腸内細菌によって制御されているかを検討するため、無菌マウスの腸管IL-5産生を調査したところ、その低下が観察された。IL-33の産生量も無菌マウスで有意に減少していた。以上から腸内細菌によってIL-33産生が促され、その結果IL-5の産生が促進していることが示唆された。 (2)原始IL-5産生細胞による腸管免疫調節とその制御:IL-33を野生型マウスまたはIL-5欠損マウスに投与し、腸管免疫に与える影響を観察した。野生型マウスでは糞便IgA量が有意に増加していたのに対し、IL-5欠損マウスではその増加は観察されなかった。IgA産生B細胞は大腸でのみ増加していたため、野生型マウスのIgA量の増加は大腸でIL-33が作用した結果であると推測された。またIgA産生の場の一つとされる大腸孤立リンパ小節では、原始 IL-5 産生細胞の増殖が確認された。以上からIL-33によるIgA産生の増強は原始 IL-5 産生細胞を介することが示唆された。 (3)原始IL-5産生細胞と慢性炎症の発症:肺における原始 IL-5 産生細胞の役割を解析した。アレルゲンの一つであるパパインを長期間投与すると喘息様の症状を呈し、原始 IL-5 産生細胞が顕著に増加した。またIL-5欠損マウスでは肺への好酸球の浸潤が全く見られなかった。以上からパパイン誘導性の喘息には原始 IL-5 産生細胞が深く関与することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重要事項に関する研究は今のところ順調であるが、詳細な解析に至っていないケースも見られる。以下に平成25年度のそれぞれの研究テーマに関する成果を述べる。 (1)腸管におけるIL-5産生細胞とその制御に関する研究:①小腸と大腸に存在する原始IL-5産生細胞はともに腸管粘膜固有層に存在するが、サイトカインに対する応答性など一部の性質が異なる。②無菌マウスではIL-5産生が停滞している。③無菌マウスでは好酸球が減少している。現在までに若年および加齢マウスにおける原始IL-5産生細の動態やマウス系統差による違いなどは確認できていない。 (2)原始IL-5産生細胞による腸管免疫調節とその制御:①IL-33によるIgA産生増強作用には主に大腸の原始IL-5産生細胞が重要である。②IL-33によって大腸の孤立リンパ小節においてIgA産生細胞と原始IL-5産生細胞の増加が見られる。③原始IL-5産生細胞はB細胞のIgA産生を増強させるのに十分なIL-5を産生する。IL-33によるIgA産生増強作用はこれまでに報告が無く、新たなIgA産生機構として注目される。今後はIL-33産生を促す機構の同定や孤立リンパ小節でのIgA誘導機構などを研究する。 (3)原始IL-5産生細胞と慢性炎症の発症:①パパインによる気管支喘息モデルにおいて肺原始IL-5産生細胞および好酸球が顕著に増加する。②好酸球増多はIL-5に依存する。これまでにパパインによる気管支喘息モデルにはIL-33の重要性が指摘されているため、現在はIL-33投与による肺原始IL-5産生細胞への影響を同時並行で観察している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)腸管におけるIL-5産生細胞とIgA産生に関する研究: 平成25年度までにIL-33の投与によって原始IL-5産生細胞が増加し、IL-5に依存するIgA産生が亢進することを明らかにしている。今年度はその作用機序を明らかにしていく。①腸管IgA産生はT細胞依存型と非依存型に大別される。T細胞欠損マウスにIL-33を投与し糞便IgA量を測定し、Il-33によるIgA産生がT細胞に依存するかを検討する。②T細胞依存的なIgA産生は小腸のパイエル板で、非依存的なIgA産生は粘膜固有層の孤立リンパ小節で行われる。どちらに原始IL-5産生細胞が存在するかを明らかにする。IL-5/VenusノックインマウスにIL-33を投与後、腸管組織切片を作製し、蛍光免疫染色法で原始IL-5産生細胞を検出する。③IL-33の投与によって変化する免疫系細胞をフローサイトメトリー法で明らかにする。増加した細胞とIgA産生の関連性を検討する。④LPS投与等のIgA産生を亢進させることが知られている実験系を用いて、IL-33の変化を観察する。またIL-33中和抗体を利用し、LPS投与によるIgA産生の亢進が障害されるかを明らかにする。 (2)原始IL-5産生細胞と慢性炎症の発症: デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性大腸炎モデルを用いて、炎症性大腸炎に原始IL-5産生細胞が関与するかを確認する。①IL-5欠損マウスにDSS誘導性大腸炎を発症させ、症状の程度を観察する。②IL-5/VenusノックインマウスにDSS誘導性大腸炎を発症させ、原始IL-5産生細胞の動態を観察する。③DSS誘導性大腸炎の発症にIL-33が関与するかを検討する。IL-33産生量の変化をELISA法で確認後、IL-33中和抗体を用いて発症の有無や症状の緩和の程度を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じたのは、H25年度に計画していた研究の一部が遅延したためであり、当該助成金はH26年度に繰り越した以下の研究を進める。 (1)腸管におけるIL-5産生細胞とその制御に関する研究:H25年度までに、若年および加齢マウスにおける原始IL-5産生細の動態やマウス系統差による違いなどは確認できていないため、H26年度に本研究を実施する。
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Research Products
(20 results)
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[Journal Article] Adipose tissue hypoxia induces inflammatory M1 polarity of macrophages in HIF-1a-dependent and independent manners in obese mice.2013
Author(s)
Fujisaka S., Usui I., Ikutani M., Aminuddin, Takikawa A., Tsuneyama K., Mahmood A., Goda N., Nagai Y., Takatsu K., and Tobe K.
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Journal Title
Diabetologia
Volume: 56
Pages: 1403-1412
DOI
Peer Reviewed
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