2013 Fiscal Year Annual Research Report
新たなPETトレーサーを用いたアミロイドーシスの病態解明と治療薬の開発
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24390179
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古川 勝敏 東北大学, 加齢医学研究所, 准教授 (30241631)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アミロイド / PET / トランスサイレチン |
Research Abstract |
アルツハイマー病(AD)をはじめとして各種難治性疾患の原因物質として「アミロイド」があり、不溶化したアミロイドを原因とする疾患は広く「アミロイドーシス」と呼ばれている。アミロイドを構成するmoleculeは単一ではないが、我々が近年開発したPETトレーサー:BF-227は、AD、クロイツフェルトヤコブ病、等の脳疾患のみならず、トランスサイレチンを原因物質とする心筋アミロイドーシスをも画像化できることが明らかになった(Furukawa et al. Circulation 2011)。我々はヒトにおいてBF-227を用いたPETで各種の「アミロイドーシス」を解析し、より早期かつ正確な診断法の確立、さらには治療薬の開発・評価を推進させる。本研究の成功裏にはアミロイドーシスの新たな診断法、治療法の開発に大きく寄与するものと考える。 基礎実験において、アミロイドを形成する各種の原因分子(トランスサイレチン、免疫グロブリン(IgG)-L鎖、IgG-H鎖、アミロイドβ蛋白質(Aβ)、血清アミロイドA(SAA)、ゲルソリン、シスタチンC、等)に対するBF-227の結合特性を解析したところ、いずれのmoleculeに対しても高い親和性を示した。 我々はこれまで既に計5名のアミロイドーシスの患者においてBF-227を用いたPETを施行した。対象患者のアミロイドーシスを生じた原因物質はトランスサイレチン、免疫細胞性(AL)、反応性(AA)であり、心臓、腎臓、腸管にアミロイドの沈着が示唆された症例を対症とした。これらの症例において、BF-227-PETはアミロイドが沈着している臓器において高信号を呈し、アミロイドのPETによる画像化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
基礎実験において、アミロイドを形成する各種の原因分子(トランスサイレチン、免疫グロブリン(IgG)-L鎖、IgG-H鎖、アミロイドβ蛋白質(Aβ)、血清アミロイドA(SAA)、ゲルソリン、シスタチンC、等)に対するBF-227の結合特性を解析したところ、いずれのmoleculeに対しても高い親和性を示すことを確認した。 我々はこれまで既に計5名のアミロイドーシスの患者においてBF-227を用いたPETを施行した。対象患者のアミロイドーシスを生じた原因物質はトランスサイレチン、免疫細胞性(AL)、反応性(AA)であり、心臓、腎臓、腸管にアミロイドの沈着が示唆された症例を対症とした。これらの症例において、BF-227-PETはアミロイドが沈着している臓器において高信号を呈し、アミロイドのPETによる画像化に成功した。これまでの臨床研究の症例数は、当初の予定よりも多く集まっており、順調に研究が進行していると考える。 BF-227は心筋アミロイドーシスのβシート構造を認識および画像化した世界で唯一のPETトレーサーである。他のトレーサーはADのAβのみしか認識しないものや、カルシウムの重合に結合するものなどに限られている。アミロイドーシスの細胞および組織障害性の主体はβシート構造と考えられており、このβシート構造をPETで画像化することは極めて診断価値が高い。本研究により各種アミロイドーシスにおけるBF-227の診断特性が明らかになり、今後のアミロイドーシスの研究の発展、診断法の向上に大きく寄与するものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 本研究を実施するために使用する研究施設・設備・研究資料: 本研究を実施するに先立ち、我々のグループは既にAβに特異的に結合するPETプローブを開発している。倫理委員会での承認を既に得ており、基礎生化学実験、動物実験のみならず、ヒト(健常者とアルツハイマー病症例)においても、研究を継続、推進する。アミロイドβやトランスサイレチンのみならず、免疫グロブリン(IgG)-L鎖、IgG-H鎖、アミロイドβ蛋白質(Aβ)、血清アミロイドA(SAA)、ゲルソリン、シスタチンC、といった各種のmoleculeが沈着した症例を対象にしてPETを継続、推進する。 (2) 研究分担者がいる場合には、その者との連絡調整の状況: 共同して研究を行う東北大学、加齢医学研究所:荒井啓行教授、機能薬理分野:谷内一彦教授、機能薬理分野:岡村信行准教授、未来医工学治療開発センター:工藤幸司教授とは週に数度の頻度でミーティングを開催し、研究をより効率的におこなう予定である。 (3) アミロイドーシスの症例を更に集めて、それらの症例においてBF-227-PETの撮像を推進、解析する。 (4) 本研究の研究成果を社会・国民に発信する方法等: 研究成果が得られたら迅速に国内、国際学会にて発表をおこなう。また同時に国際的に認知度の高い雑誌にその成果を発表して、日本のみならず国外の社会、市民にもそれら研究成果を理解してもらい、本研究成果の社会への還元をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
交付決定額を計画的に使用したが残額が生じた。 平成26年度には更なるPET撮像を予定している。東北大学サイクロトロンRIセンターにおけるPET撮像は、平成26年度は有償となるため、その費用として使用予定である。
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Research Products
(15 results)