2013 Fiscal Year Annual Research Report
リンパ腫形成パスウェイにおける新規協調遺伝子の機能的探索と分子標的としての意義
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24390249
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Research Institution | 愛知県がんセンター(研究所) |
Principal Investigator |
瀬戸 加大 愛知県がんセンター(研究所), 遺伝子医療研究部, 部長 (80154665)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 悪性リンパ腫 / ゲノム異常 / 染色体転座 |
Research Abstract |
本研究の目的は(1) 染色体転座関連遺伝子を用いて腫瘍化機能を調べる安定な系を確立すること、 (2) 染色体転座関連遺伝子と協調して腫瘍化に働く新たな遺伝子の探索並びにその分子機構を解明すること、 (3) 責任遺伝子の治療の分子標的としての意義を評価し、 (4)染色体転座関連遺伝子以外のがん関連遺伝子についても協調機能を検討することである。我々はこれまでにフィーダーと増殖因子を用いてプロB細胞に複数の転座関連遺伝子(Bcl2、Myc、Ccnd1)を導入することに成功し、増殖因子非依存性の細胞増殖が得られることを報告した。複数の蛍光色素をマーカーに複数の遺伝子を導入し、いろいろな遺伝子の組み合わせが導入された細胞分画を同定することが可能であることを実験的に証明できた。本実験系で、機能的にも3つの組み合わせ(Bcl2、Myc、Ccnd1)は、増殖能のみならず、マウス個体を約30-50日で死に至らしめることを確認した。本方法では、マウス個体内で、どの組み合わせの遺伝子導入細胞群が変化していくのかが追跡でき、各遺伝子の組み合わせの造腫瘍能を見ることができる。次の課題として、分化させた正常末梢B細胞を用いて、腫瘍化を検討する実験系の確立を試みた。具体的には、マウス脾臓細胞よりフィーダー細胞上でIL4存在下ついでIL21存在下で培養することで胚中心B細胞に分化させ、その間に、複数の遺伝子を導入するものである。これまでに、Myc、Bcl2を導入し、マウスに導入するとGCB型表現系を持つ大細胞型末梢性B細胞リンパ腫を形成させることができた。この実験系により、全ゲノムシークエンス法などにより見いだされた遺伝子群の腫瘍化能について検討するための基盤が整った。本研究をさらに進展させるため、転座関連遺伝子以外の腫瘍化に協調して働く可能性のある遺伝子の組み合わせを用いて検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究計画では、転座関連遺伝子を用いて正常細胞を再現性よく腫瘍化できるかどうかが大きな問題であったが、3つの代表的なB細胞悪性リンパ腫転座関連遺伝子 Myc, Bcl2, Ccnd1を用いて、まず、プロ B細胞の腫瘍化に成功した。これを発展させて、遺伝子スクリーニング法として、Ccnd1を取り除いて、B細胞リンパ腫細胞株から作成した遺伝子発現ライブラリーを導入し、フィーダーなし、サイトカインなしの状態で細胞増殖を検討すると、増殖細胞が得られた。その遺伝子はCCND3あるいは活性型NRASであった。両遺伝子は確認実験でも繰り返し、試験管内やマウス個体内で腫瘍化能を示した。培養条件下は腫瘍にとってin vivoよりも生育条件が厳しいので、in vivoスクリーニングを行ったところ、時間はかかったもののTCL1Aが繰り返し単離できたので、TCL1AのMyc, Bcl-2との協調作用が明らかとなった。今年度は、より実際のB細胞悪性リンパ腫に近づけるため、in vitroで成熟B細胞に分化させたものに遺伝子を導入し、腫瘍化させることができるかどうかを検討した。B細胞の分化は、フィーダー細胞としてNIH3/CD40L/Baff3細胞上で、IL4存在下にて4日間培養しさらにIL21存在下で2日間培養することで胚中心B細胞を得た。この系では、MycとBcl2のみでマウス個体内で末梢型B細胞の表現型を持った未分化大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を再現性よく作ることができた。実際の患者検体で認められるダブルヒットリンパ腫を再現できたことになる。正常B細胞から末梢性B細胞腫瘍を作成し得たことは大きな成果であり、悪性リンパ腫形成における造腫瘍化パスウェイ検索のための様々な実験系を確立することができたので、進捗状況として、順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに、正常プロB細胞ならびに試験管内で分化させた正常成熟B細胞の腫瘍化に成功し、それらの腫瘍はマウス個体を死にいたらしめる。特に実際の患者検体で認められるダブルヒットリンパ腫を再現できたことは意義が大きい。試験管内で正常細胞を用いて作成した腫瘍では、実際の患者検体と異なり、免疫グロブリン遺伝子に変異が入っていないことが明らかになったが、これは、in vitroで成熟B細胞を誘導したことによると考えられた。腫瘍化モデルとしては重大な乖離であるとは考えておらず、研究計画の変更を考慮する必要はないと考える。本研究成果により、患者検体に認められる変異遺伝子群の腫瘍化能を検討することができる実験系として確立しつつある。これらの実験で確認できた腫瘍化関連遺伝子群は治療の分子標的として重要な役割を担っていることが示唆されている。今年度は、Myc遺伝子単独を用いて、実際に患者検体で認められる変異遺伝子やそのシグナルパスウェイ上に存在する遺伝子群を導入することで、正常B細胞から腫瘍化に成功するかどうかを検討する。具体的には最近明らかにされたバーキットリンパ腫に認められた変異遺伝子群などを対象に実験を進める計画であり、当初計画していた実験計画に大きな変更はない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末に購入した消耗品の支払いを次年度扱いとしたため。 当初の使用計画と大きく変更することはない。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Gene expression profiling of Epstein-Barr virus positive diffuse large B-cell lymphoma of the elderly reveals alterations of characteristic oncogenetic pathways.2014
Author(s)
Kato H, Karube K, Yamamoto K, Takizawa J, Tsuzuki S, Yatabe Y, Kanda T, Katayama M, Ozawa Y, Ishitsuka K, Okamoto M, Kinoshita T, Ohshima K, Nakamura S, Morishima Y, Seto M.
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Journal Title
Cancer Sci.
Volume: in press
Pages: in press
Peer Reviewed
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